中国で開発された新型コロナワクチンの接種を進め、世界的にも接種率が高くなっている各国で感染者が急増する中、
シノバック・バイオテック(科興控股生物技術)製ワクチンの有効性に対する懸念がさらに高まっている。

中国政府はパンデミックの発生以来、その他の国で開発されたワクチンを入手できない、
または購入する意思がない途上国などに自国製ワクチンを提供。

それを外交の武器としてきた。その中国にとっては、また新たな障害が発生したといえるだろう。

インドネシアは6月17日、シノバックのワクチンを接種した医療従事者350人以上が新型コロナウイルスに感染したと発表した。
当局によると、このうち数十人が入院しているという。インドで最初に確認された「デルタ株」への感染が疑われており、
この変異株に対するシノバック製ワクチンの有効性が、さらに疑問視されている。

また、コスタリカは16日、有効性に不安があるとして、検討していたシノバック製ワクチンの購入を見送ることを明らかにした。

世界でも接種率が高い国の多くは、シノバックともうひとつの中国製ワクチン、シノファーム(中国医薬集団)製に大きく依存してきた。
だが、その各国では感染者が急激な勢いで増加している。

両社のワクチンはいずれも、世界保健機関(WHO)から緊急使用の許可を得ている。
だが、シノバック製は有効性が51%とされており、WHOの承認の基準(50%)をごくわずかに上回っているにすぎない。

さらに、その有効性を裏付ける臨床データも多くは公表されておらず、発表されデータが一貫性に欠けることも、
同社製ワクチンが各国に広く受け入れられることを妨げている。

一方、ウルグアイはシノバック製ワクチンの有効性について6月8日、臨床試験ではなく実臨床から得られる「リアルワールドデータ」を初めて公表。
「ICUへの入院と死亡を防ぐ効果は90%を超え、発症予防効果は61%だった」と発表している。

ウルグアイは、少なくとも1回の接種を受けた人の割合が米国(53%)よりも高い61.4%で、これは世界的にも高い水準だ。
だが、感染による人口10万人あたりの死者数は、世界で最も多い国のひとつとなっている。

中国当局は、自国の製薬会社が開発したワクチンに疑念が持たれるのは、中国に対する偏見と差別的な報道のためだと主張している。
シノバックとシノファームの両社が直接、この問題について対応することはほとんどない。

中国当局は、後期臨床試験が完了する前から接種を開始した自国製ワクチンについて、その有効性を強く擁護している。

ただ、シノファームのワクチンについて査読付きジャーナル「JAMAネットワーク」に発表された論文によると、
「持病がある人、女性、高齢者に対する有効性は確認できなかった」という。

また、シノバックのワクチンについては、デルタ株に対する有効性を確認するための十分なデータが公開されていない。
その他の製薬会社が開発したワクチンは、1回のみの接種の場合、デルタ株に対する発症予防効果は大幅に低下するとみられることがわかっている。

中国疾病対策予防センター(CCDC)のガオ・フー(Gao Fu、高福)主任は今年4月に出席した会議で、
自国製ワクチンの「有効率が高くない」ことを認め、「問題解決の方法を模索している」ことを明らかにした。

だが、中国政府はその直後、この発言の内容を否定。SNS上から関連のコメントを削除するとともに、同主任を公に非難。
高は共産党系の「環球時報」紙で、自身の発言に関する報道を「完全な誤解」だと語った。
https://forbesjapan.com/articles/detail/41947