オーストラリア最大の都市シドニーで28日までに、新型コロナウイルスのデルタ株の感染者が計128人に達した。
デルタ株はインドで初めて確認された変異株で、従来株より感染力がきわめて高い。

オーストラリア北部ノーザン・テリトリーとクイーンズランド州、西オーストラリア州でも複数の陽性者が確認されている。

豪国内の複数地域で同時に感染者が確認されたのは、ここ数カ月で初めて。
連邦政府と各州政府は28日中に緊急協議をする予定。

ジョシュ・フライデンバーグ財務相は、各州がさらなる感染拡大を防ぐために州境を閉鎖し、
新たな規制を敷いていることから、「重要な時期」にあるとした。

「より感染力の強いデルタ株が広がっていることから、このパンデミックが新たな局面に入っていると考えている」と、
フライデンバーグ氏は28日、豪ABCニュースに述べた。

感染拡大を受け、ニューサウスウェールズ州シドニーとノーザン・テリトリーのダーウィンはロックダウンに入った。また、4つの州で規制が敷かれている。
最も深刻な状況に見舞われているのはシドニーで、住民約500万人に自宅待機命令が出されている。

ニューサウスウェールズ州政府は27日、ロックダウンの対象地域を大シドニー圏、ブルー・マウンテンズ、セントラル・コースト、ウロンゴンの全域に拡大した。
多くの事業や施設にも閉鎖命令が出された。

ニューサウスウェールズ州のグラディス・ベレジクリアン州首相は28日、新たに18人の感染が確認されたと発表した。
前日の新規感染者は30人で、12人減少した。過去24時間で5万9000人近くがウイルス検査を受けた。

「この(デルタ)株では、家庭内感染がほぼ100%の割合で起きている。
そのため、我々は感染者数が変動し、大幅に増加するのに備えておかなければならない」と、ベレジクリアン氏は述べた。

オーストラリアは国境を閉鎖し、厳格な隔離措置や迅速な検査・追跡システムを導入し、新型ウイルスの感染率を極めて低い水準に抑え込んできた。
今年に入ってからは新型ウイルス感染症COVID-19による死者は出ていない。同国の累計死者数は910人、累計感染者数は3万450人。

しかし、より感染力の強いデルタ株は同国の防御力を低下させており、今年は複数の小規模な感染が発生している。

ニューサウスウェールズ州のブラッド・ハザード州保健相は、デルタ株を「非常に手ごわい敵」と呼び、
「現時点のあらゆる防御策について、デルタ株は反撃方法を理解しているようだ」と述べた。

シドニーでの感染者増加は先週、人気スポットのボンダイビーチで最初に確認され、市の中心部や西側へと広がっていった。
入国者を空港からタクシーに乗せた運転手を経由して、デルタ株の感染が拡大したとされている。


ニューサウスウェールズ州政府は、パーティー参加者30人中24人が感染したシドニーの集団感染について、
感染しなかった人はワクチンを接種していたと指摘。州民に接種を受けるよう呼びかけている。

「ワクチンを接種していれば、COVID-19に感染しない可能性が高くなる」と、ハザード氏は28日に記者団に述べた。

今回の感染者急増によって、連邦政府が展開するワクチン接種事業が遅いとの批判が再燃している。
オーストラリアで接種を完了した人は成人人口の約5%。米ファイザー製か英アストラゼネカ製いずれかのワクチンの1回目の接種を受けた人は約30%。

人口の大半が接種を終えれば、ロックダウンは二度と必要ないはずだと政府を批判する声が出ている。
https://www.bbc.com/japanese/57633630