世界各地で勢いを増すインド由来の新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」が東南アジアでも拡大し始めた。
コロナの抑え込みで一定の成功を収めてきた地域だが、インドネシアとタイを中心に感染が広がり、行動制限強化やワクチン接種の加速で抑制を図る。

感染力の強さを警戒する周辺国も流入抑止に懸命だ。

「このまま対策を取らなければ(5月に感染が急拡大した)インドのような大惨事に直面する」。
6月27日、インドネシア医師協会幹部が記者会見で危機感をあらわにした。

首都ジャカルタでは6月下旬以降、外出する人が急減、街が閑散とし始めた。

1日当たりの新規感染者は過去最多を連日更新し2万7千人を超え、ジャカルタの隔離施設のベッド占有率は9割を上回った。
こうした状況を受け政府は7月3日、商業施設の閉鎖など新たな行動制限を実施。

2回のワクチン接種を終えたのは人口の約5%にとどまっており、ジョコ大統領は接種回数を8月には現状の倍の1日200万回にするようハッパをかけている。


タイでは新規感染者の4分の1がデルタ株に感染。移民労働者の間でクラスター(感染者集団)が発生しており、政府は規制を強化した。
首都バンコクとその近郊で、工事現場と作業員宿舎の30日間の閉鎖を命じ、約200人の作業員を抱える建設会社経営の女性(36)は「経営は極めて厳しい」と途方に暮れる。

6月1日から都市封鎖(ロックダウン)が続くマレーシアでは新規感染が収まらず、2度目の期間延長に追い込まれた。
野党や世論からの強い圧力でムヒディン政権は28日、中低所得層への現金給付など1500億リンギット(約4兆円)の追加経済対策を発表した。


カンボジアは親密な関係の中国からワクチンを大量に調達し、接種率は東南アジアではシンガポールに次ぐが、デルタ株の流入も確認され、政府は危機感を強めている。

屋外でもフェースシールドの装着が義務付けられるフィリピンでは、水際対策としてインドなどからの入国禁止を継続中だ。
ワクチン接種者は1割に満たず、ドゥテルテ大統領は「接種に同意しないならフィリピンから立ち去れ」といらだちを隠さないでいる。
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