■Y!ニュース/夕刊フジ(7/10 土 16:56)
https://news.yahoo.co.jp/articles/696eee2961ed6263c6d4c4478ccc90004805fab6

 コロナ禍の対応のため、「貯金」に当たる財政調整基金を大幅に減らす地方自治体が多いが、埼玉県川口市(奥ノ木信夫市長)は、税収が当初の見込みより大きく増えるとして、およそ30年ぶりとなる補正予算の増額補正を発表した。近年は「住みやすい街」としても知られる同市に何が起きているのか。

 市は6月末、2021年度の市税収入について、前年度比54億円減の909億円と見込んでいたが、9月の補正予算で増額補正し、943億円になると発表した。前年度より減ってはいるが、年度半ばで増額補正したのは1989年度以来だという。

 市税制課の担当者は「市民税の所得割額が増額したことと、固定資産税の減免措置申請が見込みを下回ったことが主な理由として挙げられる。また、かねてより市長が説明している通り、『住みやすい街』として認識されていることもあるのではないか」と説明する。

 かつては鋳物など産業の街としてのイメージが強かった同市だが、いまや東京のベッドタウンとして人気が高い。住宅ローン専門の金融機関ARUHI(アルヒ)が発表する「本当に住みやすい街大賞」の関東部門で、2020年と21年の2年連続で1位となった。荒川を挟んで東京と隣接して利便性が高い上、都内と比べてマンション価格が割安であることや、商業施設が充実していることなどが評価されているようだ。

 旧鳩ケ谷市と合併したこともあって、人口は10年前と比べて10万人近く増え、今年6月時点で60万7352人となった。市外からの移住者も年々増えているという。

 埼玉県の21年の公示地価は8年ぶりに下落したが、川口市は住宅地が1・0%、商業地も0・3%の上昇だった。

 行政運営では、14年度以降、市税の徴収強化に取り組み、市有地の積極的な売却などでも財源を確保している。コロナ対応では市民への無料PCR検査を実施(すでに終了)したほか、低所得者の子育て世帯に国の特別給付金5万円に上乗せするかたちで1万円を給付するなどの取り組みも行った。

 少子高齢化や一極集中など課題山積の自治体だが、一つのモデルケースといえるかもしれない。