ひたちなか市の国営ひたち海浜公園で八月に開催予定だった国内最大級の野外音楽イベント「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」が中止に追い込まれたのは、新型コロナウイルスの感染拡大を懸念する県医師会の要請を受け入れたからだった。そのトップの鈴木邦彦会長が十四日、中止決定後初の定例記者会見に臨んだ。医師会には二千件以上の抗議が殺到。鈴木会長は「非常に困惑している」と影響の大きさを口にした。(松村真一郎)
 医師会によると、主催者が中止を発表した七日から十三日午後五時までに「なぜ感染対策を講じた開催に反対するのか」「この時期に要請するのはなぜか」といった抗議が、電話で千六百二十八件、メールで六百五十一件の計二千二百七十九件あった。
 この日の会見には、新聞やテレビなど十一社が出席し、「ロッキン」の愛称で親しまれるフェスの中止問題に質問が集中した。
 鈴木会長は、抗議について「職員が対応に追われた」と説明。県メディカルセンター(水戸市笠原町)に入っている医師会の事務所のフロアには、警備員も新たに配置した。
 主催者が要請を受け入れ、中止したことには「深く感謝したい」と語った。感染が急拡大する東京都心からも多くの来場が予想される上、熱中症と新型コロナを見分けるのが難しく、医療機関への負担が懸念されることから要請書を出したと理解を求めた。
 一方、イベントの総合プロデューサーで音楽評論家の渋谷陽一さんが公式ホームページ上で、要請について「中止や延期の基準となるものが明示されていない」と疑問視したことには、「私たちが細かい点を規定できる権限はない」と具体的な説明を避けた。
 主催者側とのコミュニケーション不足などを問われると、「今年は例年と違いコロナ禍だったので、いつもにも増して相談、連携が必要だったと思う」と反省材料を挙げていた。
 ロッキンは二〇〇〇年から毎年夏に国営ひたち海浜公園で開かれてきたが、昨年は新型コロナの影響で中止。今年は、八月七〜九、十四、十五日に開催する予定だった。収容人数を例年の半分以下に減らし、マスクの着用や大声での合唱禁止を呼びかけていた。
 鈴木会長らは今月二日に主催者の茨城放送を訪れ、今後の感染拡大状況に応じて中止または延期を検討すること▽開催する場合も、さらなる入場制限措置などを講じ、観客の会場外での行動を含む感染防止対策に万全を期すこと−の二点を要請した。

東京新聞

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