新型コロナウイルスへの感染およびワクチン接種のいずれも、その後数カ月あるいは数年にわたり、
免疫反応を引き出せる可能性があることが数々の研究から分かってきた。

だが、ウイルス封じ込めには変異株に対するワクチンの効果が鍵を握っている。

最近の研究によると、米国内の感染例の大部分を占めるデルタ株(インド型)を含む変異ウイルスは、
過去の感染やワクチンによって起こる免疫反応を部分的に回避できることが分かった。
ただ、ワクチンの接種を完了すれば、かなりの防御効果が得られるようだ。

デルタ株による感染が米国で広がる中、過去の感染やワクチン接種によって得られる免疫が、
緩衝材となる公算が大きいと疫学者は指摘している。それでも、ウイルスが拡散する可能性は残るという。

ノースイースタン大学のサミュエル・スカーピオ助教授は「一部の個人、時には町や都市全体が過去の感染や
ワクチン接種を通じて十分な免疫を得られず、局地的な感染拡大を防げないことがある」と話す。

米国では減少傾向にあったコロナ感染による入院件数が再び増えている。
連邦データによると、7月13日時点で1日当たりの入院件数(7日平均)は2700件余りだ。新規感染も増えている。

米疾病対策センター(CDC)は、感染者の大半はワクチンを接種していない人だとしている。

保健当局によると、ウイルスが今ある防御を逃れ、さらに進化する可能性があるため、
世界全体でワクチン接種を進めて感染を抑え込むことの切迫性がさらに高まっている。

ピッツバーグ大医療センターの感染症責任者、ジョン・メローズ氏は「ウイルスに時間と機会を与えれば、何が起こるか分からない」と危機感を示す。

過去の感染やワクチン接種による免疫反応の持久性は、この先のコロナの感染動向を左右する最も重要な要素の1つと考えられている。
だが、最も早い感染やワクチン接種の事例でも18カ月程度しか経過していないこともあり、免疫反応による予防効果がどの程度持続するか正確には分かっていない。

免疫学者によると、健康な人の多くは、データが入手できる限りの期間において、過去の感染、ワクチン接種の双方について抗体が体内である程度持続する。
だがこれまで感染から数カ月後に抗体が減っているとの報告も寄せられており、免疫反応が短期で消えるとの懸念も浮上している。

だが免疫学者は、抗体の減少は免疫反応が適切に機能している兆候でもあり得ると指摘している。抗体のレベルは、えたいの知れない侵入者に対して
体が最初に反応する感染直後にピークに達することが多い。その後は通常、再び同じ脅威にさらされるまで、より低いレベルで安定する。

「抗体反応が下がっても、われわれは恐れるべきではない」。マウント・サイナイ医科大学・精密免疫研究所のミリアム・メラド所長はこう述べる。


またワクチンは、過去の感染よりも一貫した予防効果を提供するようだ。

とはいえ、免疫不全の人はワクチン接種を完了した後も、強力な免疫反応を引き出せていない。
イスラエルでは、デルタ株による感染が広がっていることを受けて、免疫システムが弱い市民にブースター(追加免疫)の接種を開始した。

「メッセンジャーRNA(mRNA)」技術を使ったファイザー・独ビオンテック連合と米モデルナのワクチンは
いずれも、少なくとも半年は効果が続くことが確認されている。CDCは先頃、昨年12月や今年1月にワクチンを接種した人の中で、免疫が下がっている証拠はまだ見られないと明らかにした。

研究結果からは、ワクチンの接種を完了していれば、デルタ株に対してもかなりの予防効果があることが分かっている。
ただ、変異ウイルスに対しては、免疫反応がやや弱まるようだ。ネイチャーに掲載された研究によると、
ファイザーか英アストラゼネカ製のワクチンを2回接種した人のうち、95%はデルタ株に対する中和抗体の防御効果が確認された。

一方、1回しか接種していない人では、デルタ株をほとんど阻止できなかった。また、最長12カ月前にコロナに感染した人の血液中の抗体を調べたところ、
以前に米国の感染者の大半を占めていたアルファ株(英国型)に比べて、デルタ株への防御効果が落ちることも分かった。
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1357851.html