https://news.yahoo.co.jp/articles/66cd7021c0f7e414a0212c631a663fde5177762c

東京五輪の事前合宿中に失踪したウガンダの男子重量挙げジュリアス・セチトレコ選手(20)が7月23日に帰国後、
警察に拘留されたままの状態が続いていると、地元紙などが安否を懸念している。

セチトレコ選手は五輪開催前に世界ランキングの順位が下がり、出場資格を失ったため、
7月20日にウガンダに帰国する予定だった。ところが7月16日、日本で仕事がしたい、荷物を家族に送ってほしいという
趣旨の書き置きを残し、事前合宿がおこなわれていた泉佐野市のホテルから姿を消す。

20日に三重県内で警察に保護された際、難民申請をしたいとの意向を示したが、ウガンダ大使館の担当者が
自発的に帰国するよう本人を説得。翌21日に帰国の途についた。

23日には無事に首都カンパラに到着したが、米紙「ニューヨーク・タイムズ」などによれば、セチトレコ選手は
帰国後、空港で2時間ほど拘束され、警察に連行された。地元ジャーナリストなどによれば、
それ以降セチトレコ選手は犯罪捜査局に拘留されたままだという。

ウガンダはヨウェリ・ムセベニ大統領が35年政権を握る事実上の「独裁国家」で、反政府派を厳しく
取り締まることで知られている。人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、2021年1月におこなわれた
大統領選の際、多くの対立候補の支持者が逮捕・殺害されたと報告している。

DV被害者を加害者と面会させるのと同じ

犯罪捜査局の広報官はセチトレコ選手を勾留している理由について、ウガンダ英字紙「インディペンデント」に、
犯罪に関与していないか確認していると説明。しかしながら、前出の「ニューヨーク・タイムズ」は、
セチトレコ選手が日本で失踪した際、ウガンダの政府高官は彼を「反逆者」と呼び、受け入れがたい行為に
激怒していたと報じており、強権的な政府の逆鱗に触れたセチトレコ選手の身の安全が危惧される。

難民申請を希望していたセチトレコ選手を本国に送還したことに対しては、日本でも批判の声が上がっている。
7月22日、全国難民弁護団連絡会議は、東京五輪・パラリンピックで来日した選手や関係者が難民申請の意向を
示した場合、申請の機会を保障するよう求める申し入れ書を大会組織委員会などに提出した。

同会議の児玉晃一弁護士は、難民申請の支援をするために渋谷警察署でセチトレコ選手との面会を求めたが、
担当者に「難民申請はしていない」と言われ、面会を許可されなかったという。

また、同会議の申し入れ書によれば、五輪の代表選手として派遣されながら失踪したことが反政府的な活動と見なされ、
帰国時に過酷な処罰等を課される可能性がある。こうした状況で選手が難民申請の意向を示した際、
大使館の担当者に面接させて翻意を促すのは、警察に保護を求めたDV被害者を加害者に会わせ、
家に戻るよう説得されるのを見過ごすのと同じで、あってはならない対応だと申し入れ書は指摘する。

サプリ購入に借金、失格後は自殺も考える

ウガンダメディアや市民はセチトレコ選手に同情的だ。ウガンダの有名歌手モーリス・キーリャは、
セチトレコ選手の失踪は、国内のアスリートが窮状に直面している証拠だとして、
「私たちはジュリウス・セチトレコを犯罪者のように扱うべきではない。彼は違う」とツイートしている。

ウガンダでは国際大会で入賞するレベルのアスリートに対しても金銭的支援がほとんどなく、多くの選手が困窮している。
「インディペンデント」紙によれば、2019年のアフリカ競技大会でボクシング銅メダルを獲得したヘレン・バレケ選手は、
いまでもスラムに暮らしている。縫製業で生計を立てているが、最近、家賃を滞納したため、ミシンを大家に没収されたという。

セチトレコ選手も、2018年に豪州で開催されたコモンウェルス・ゲームズでは56kg級の重量挙げで10位に入るなど、
数々の大会で入賞し、メダルを獲得してきた。だが、そうした功績も彼の収入増加にはつながらなかった。
母親によれば、セチトレコ選手は重量挙げに適した肉体をつくるサプリメントの購入のためにいつも借金をしていたという。

母親自身も息子が練習で負ったケガの治療費を出したり、食事を差し入れたりするためにひんぱんに金を借りていた。
母は息子にスポーツをあきらめるよう、諭していたという。

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