海上自衛隊の長年の悲願とされてきた空母。だが、防衛省のある幹部は「海上自衛隊にもろ手を挙げて喜んでいるという雰囲気はない」と話す。
「南西諸島で作戦を行うためには有用だろうが、いずもは本来、対潜水艦用の艦船。戦闘機の運用で、対潜能力が落ちては全く意味がない。海自内には航空自衛隊がいずもを使うことへの抵抗もある」

では、なぜ政府は空母化にこだわったのか。別の幹部は、米国製のSTOVL(ストーブル)戦闘機F35Bの導入が始まりだったと証言する。

政府は昨年十二月、旧型で古くなった九十九機のF15の代わりに今後、F35AとF35Bの計百五機を順次購入すると決めた。
総額一兆二千億円。背景には兵器売り込みで対日貿易赤字を減らそうとするトランプ米大統領の圧力がのぞく。

トランプ氏は昨年五月、自動車の関税引き上げの検討を発表しており、経済産業省の幹部は「あれ以来、『自動車の関税を上げさせない』は安倍政権の至上命題になった」と話す。

防衛省の幹部は「トランプ氏に手土産を持たせないと、何を言ってくるか分からないと政府は常に考えている。そもそもF15の後継機をどうするかの検討があり、官邸も防衛省も取引的に見せられる道を模索していた。それでF35の百機購入になった」と明かす。

「百機買うならA型だけでなく、違うタイプの攻撃力もあった方がいいという流れになった。STOVL機のB型は船に載せないと意味がない。それで一度は立ち消えになった空母化の話が出てきた」と話した。