米国で子供の新型コロナウイルス感染が急ピッチで増えている。
8月上旬の感染者数は6月下旬時点に比べて11倍強に拡大した。

学校の本格的な対面授業の再開を9月に控え、子供の感染に対する危機感が広がっている。

米小児科学会の集計によると、子供のコロナ感染は今年4月下旬から6月下旬にかけて減少傾向が続いたが、
7月に入り拡大に転じた。8月5日までの一週間では新規感染が約9万4000件に上り、
直近で最低水準をつけた6月24日の週(8447人)の11倍強の水準に膨らんでいる。

子供のコロナ感染は感染者全体の15%を占めている。

子供の感染者の入院も増えている。米疾病対策センター(CDC)によると、
10日時点で0〜17歳の入院患者数(7日間移動平均)は203人に上り、217人だった1月上旬のピーク時の水準に迫っている。

米国の一部地域ではすでに学校の対面授業が始まっている。
猛威をふるうインド型(デルタ型)のコロナウイルスによって全体的に感染者が増えていることもあり、
保護者や教職員の間では子供のコロナ感染に対する懸念が膨らんでいる。

米北東部マサチューセッツ州のボストン小児病院の医師、リチャード・マリー氏は10日、日本経済新聞の取材に対し、
「ワクチン接種率が低い地域で働く医師からは子供の感染が増えていると聞いている」と話した。

「感染者数が増えれば、相対的にコロナが重症化してしまう子供の数も増えてしまう」として、
12歳以下のワクチン接種がまだ承認されない間はまわりの大人の接種を広げることが重要だと指摘した。

米小児科学会は「デルタ型が子供らに新たな脅威をもたらしている」として5日、
米食品医薬品局(FDA)の長官に対して12歳未満の子供へのワクチン接種を早急に始めるよう要請した。

米国では現在、ワクチン接種は12歳以上が対象となっている。

地域によっては小児病棟も混み始めている。米南部テネシー州の保健当局は州内の小児病棟が近く満員になると警告した。
同州保険当局幹部は5日の記者会見で、「夏の時期にここまで子供らが入院するのを見たことない」と話した。

南部ミシシッピ州の学校では8月2〜6日までの間に943人の生徒が新たに感染し、4435人が自主隔離を迫られた。
同時期の教職員の新規感染も296人に上っている。


一方、これまでワクチン接種の義務化に消極的な立場をとってきた米教員連盟(AFT)は
ワインガーテン会長が8日、教職員の接種義務化を指示すると表明した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN10BBL0Q1A810C2000000/