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Displaced Afghans arrive at a makeshift camp in Kabul.

【コラム】米国、アフガンに背を向けることできない−ブルームバーグ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20210816-97492023-bloom_st-bus_all

(ブルームバーグ): わずか数週の間に起こったアフガニスタンの政権崩壊は衝撃的だったが、驚きではなかったはずだ。

バイデン米大統領が4月に米軍撤退計画を発表後、反政府勢力タリバンは猛攻撃によってほぼ全ての主要都市を制圧。国軍は事実上崩壊した。諸外国が国民と大使館員を国外へ避難させアフガン国民が脱出を図る中、タリバンは首都カブールを制圧した。

今や、最良のシナリオですらも大惨事としか言いようがないことは明らかだ。アフガニスタンの民主主義は骨抜きにされ、経済復興へのこれまでの歩みは失われるだろう。少数民族は危険にさらされ、過激派は勢い付き、薬物の不法取引は広がり、難民は急増するだろう。米国が20年をかけ約2兆ドル(約219兆円)を費やした人道面での改善は数週間で忘れ去られるだろう。女性と少女にとっての脅威は特に大きい。

国内外での戦略的な影響も楽観できない。20年前の米同時多発テロを可能にしたテロリストの温床が復活する恐れがある。米国は対抗勢力への同地域での影響力を失うだろう。中でも警戒すべきはアフガニスタンの天然資源への長期的アクセスを狙って既にタリバンと関係を築きつつある中国だ。米国の同盟国はもちろん、米政権がアフガン内の味方をいかに簡単に見捨てたかに気付くだろう。米国の言葉とコミットメントは全世界で疑われるようになる。

この混沌とした状態についてバイデン大統領を責めるのはたやすいが、同大統領1人の責任ではない。4政権にわたって米国のアフガン戦略は、一貫性が無いものから効果を伴わないものへと悪化した。国際テロ組織アルカイダの掃討をほぼ完了した後、米国のアフガン政策は焦点を欠いた。ブッシュ政権とオバマ政権のアフガン戦略には失敗が多かった。トランプ前米大統領がアフガン政府を無視してタリバンと結んだ合意は、米国の持つ交渉材料を失わせアフガン政権を崩壊の運命に追い込んだ。

少し前までは、緊張をはらんだ安定が恒常化するかのようにも思われた。米兵の死者数は減り、休戦合意が結ばれ、米駐留軍の規模が縮小されても混乱を十分に食い止めているように見受けられた。しかし、そうした小康状態が永久に続いたとは考えにくい。米国がトランプ政権の合意に基づいて撤退しアフガン国民へのコミットメントを事実上放棄することを表明している以上、タリバンは機会が来るのをひたすら待てば良かった。

このような悲劇の中で、米国が幾分の名誉を残して撤退することが可能だろうか。

バイデン政権はまず、アフガン国民への一段の支援を提供しなければならない。米軍のために働いていた約1万7000人のアフガン国民の国外退去を急がなければならない。料理人や通訳、運転手、保安要員、エンジニアとして働いていたこうした人々とその家族は今やタリバンの標的だ。その他のアフガン国民も脱出できるよう、航空ルートの確保を含め可能な限りの措置を講じる必要もある。さらに、難民の落ち着き先を見つけるため同盟国と協力し、相応の負担を受け入れるようパキスタンとイランに圧力をかけるべきだ。

バイデン大統領はタリバンの抑制に向けてリーダーシップを発揮する必要もある。アフガニスタンで過激派が再び勢力を持つようになれば、空爆と特殊作戦を実施すべきだ。情報活動での協力と米軍機による基地使用許可を近隣諸国に働き掛けることは必須だ。米国にはアフガニスタンの未来に関わり続ける道徳上および戦略上の責任がある。

タリバン政権への制裁緩和、ましてや国際社会からの支援と投資については、基本的人権の尊重と薬物取引の管理、和平プロセス再開を条件としなければならない。

現在の惨状に鑑み、これらの措置は小さなものに見え、アフガニスタンでの戦争の結果に対する非難は尽きないだろう。しかし米国と国際社会は新たな現実を受け入れ、少しでも良い結末へと最善の努力をしなければならない。

言うはやすく行うは難しだが、かつての欧州のファシズムから現在のシリアまで、米国がなすべきことを十分なし得なかった場合の結果も同様に忘れ難い。

(マイケル・ブルームバーグ氏はブルームバーグ・ニュースの親会社ブルームバーグ・エル・ピーの創業者で、過半数株式を保有しています。このコラムの内容は同氏個人の見解です)

原題:The U.S. Can’t Walk Away From Afghanistan: Michael R. Bloomberg(抜粋)

(c)2021 Bloomberg L.P.