「横浜市では自分の年代はまだ接種できない。動きが遅く、あてにならない」
横浜市南区の男性会社員(48)はこう漏らす。

大阪府に住む同年代の親戚も、都内に住む勤務先の後輩も、7月末には自治体による新型コロナワクチンの接種を終えていた。
だが横浜市ではその時点では予約受付も始まっていなかった。

男性は仕方なく、東京都内まで出向いて勤務先の職域接種を受けた。
自分は接種できたが、市は頼りにならないという思いが募った。

新型コロナ対策の切り札とされるワクチン接種をめぐり、横浜市では混乱が続いた。

高齢者向けに5月に始まった予約受付ではアクセスが集中し、サーバーが何度もダウン。電話予約もいっこうにつながらない状態が続いた。
若い世代への接種がいつごろになるか、見通しを示すのも遅れた。

川崎市は7月7日に早々と、12〜59歳の市民の予約受付開始日を公表。もっとも遅い12〜39歳でも、7月31日から予約ができるようになった。
海老名市や逗子市では6月中に、鎌倉市や茅ケ崎市では7月初旬に見通しを示していた。

一方、横浜市が12〜64歳の予約開始日を公表したのは8月4日のことだ。
病院や診療所では順次、全年齢の予約受付が始まった。だが市が予約を受け付ける集団接種や大規模接種では、39歳以下の予約開始は23日まで待たなければならない。

SNSでは「横浜市は遅い」などといった書き込みが相次ぐ。なぜこれほどの差が出るのか。


横浜市の担当者は「全住民を対象とした事業を混乱を避けながらやろうとすると、大都市では難しいことが多い」と話す。
横浜市の人口は、基礎自治体で全国最多の約377万9千人。川崎市の約2・5倍、相模原市の5倍以上にのぼる。

政府の方針を受け、接種券の発送は予定より繰り上げた。だが「印刷業者にとってみれば数百万人分の前倒しには限界がある」と担当者。
規模の小さい自治体と比べるとどうしても準備に時間がかかり、「小回りが利きにくい」という。

個別接種を行う病院や診療所も約1700カ所にのぼる。接種状況を把握し、医療機関側の要望などを聞いて調整する必要もある。

「事務作業とは違い、ワクチン接種は医療行為。丁寧な対応が必要で、人口が多いほど時間がかかってしまう」と担当者は言う。
https://www.asahi.com/articles/ASP8J5WY7P8DULOB016.html