0001haru ★
2021/08/20(金) 17:02:02.75ID:UWcVpgWv9こう打ち明けるのは、アフガニスタン空軍のパイロットであるサイードさん(仮名)だ。
「タリバンが首都カブールを制圧したあの日も職場にいました。外へ出ると空港に数百人、数千人もの市民らが押し寄せ、無我夢中でアフガニスタンを脱出しようとして、カオスのような状況になっていました。
150人が定員の輸送機に、実に500人以上ものアフガニスタン人がタラップを次々によじ登って乗り込む様子を目の当たりにして、とても危険だと感じました」
サイードさんはその夜、急いで妻が待つカブール市内の自宅へと戻り、翌日夜が明ける前の早朝に自宅を出て、タクシーで空港のゲートに向かったという。
「空港に向かう道中では何箇所も銃を抱えたタリバンの戦闘員らに検問されました。本当に緊張する恐ろしいものでした。私がアフガン空軍のパイロットであることなどがばれたら間違いなく殺されます。妻は助手席でがたがたと震えていました。
私たちは、身元が絶対に判明しないよう、タリバン兵のような民族衣装を身にまとって変装していたので、幸い身元確認のIDや書類などの提示を求められることはなく空港にたどり着くことができました。
しかし、空港周辺にはすでに多くのタリバン兵がうろついており、監視の目を光らせている状態でした」
何箇所にも及ぶタリバン兵による検問を通過して到着した空港には、前夜に続いて数千人ものアフガニスタン市民らが着の身着のままで詰め掛けていたという。
サイードさんは、仕えていたアメリカ軍関係者らと緊密に連絡を取り合って早急な国外退避を試みたものの、夜になるまで搭乗できる輸送機は手配されず、再び自宅に戻った。
旧知のアメリカ軍関係者らはカブール制圧の数日前、すでに母国へと退避していたという。
そんななか、アフガニスタン空軍のパイロットやエンジニアの同僚の中には、アフガン軍機で次々に脱出を試みる者もいたと話す。
事態は大混乱を極めるなか、サイードさんは17日昼に再び、妻とともにカブール空港へ向かって、脱出のタイミングを待ち続けることにした。
「今、タリバンの戦闘員が、カブール市内の住宅1軒1軒のドアを叩いて周り、身元の確認やどのような仕事に就いているかなど調査しているとの情報が入ってきています。
私は間違いなく、タリバン側のブラックリストに入っている人物です。見つかったら必ず危険な目に遭うことがわかっています。
タリバンがカブールを制圧してからすぐに、空軍のパイロットであることを証明する資料などはすべて隠しましたし、銃も見えないところに仕舞いました」
事実、空軍を持たないタリバンにとって、最大の敵はアフガニスタン空軍であった。
大規模な地上攻撃を行うに当たり空軍の弱体化が狙われ、特にパイロットを狙って暗殺する事例が相次いでおり、今月も同僚のパイロットらが殺害される事件が起きたという。
8月7日には、カブール市内でパイロットの車に取り付けられていた爆弾が爆発してパイロットは死亡、
ロイター通信によると死亡したパイロットは1年前に治安上の脅威から家族とともにカブールに移住してきたばかりだったと報じられている。
「今はまだカブールを制圧したばかりのタリバン戦闘員らにとって、私がどこの誰であるか、ということまでは把握しておらず、自宅の住所までは判明していないかもしれません。
ただ、いずれ彼らは気付き、必ず実行に移すでしょう。その前に国外退避しなければ――」
アフガニスタンの治安部隊は30万人以上と、タリバン兵の数を優に上回っていたとされるなか、アフガン軍がタリバンに抵抗せずに降伏したとの批判の声も上がる。
一方で、タリバン側がパイロットなど軍の重要人物や市民社会の指導者などを標的に暗殺計画を実行してきたことへの心理的ダメージが次第に募り、全国に分散したアフガン軍に対して水や食料、弾薬などの補給任務の負担も増す中で空軍が弱体化していき、次第に窮地に追い込まれていった実情が垣間見える。
わずかながらある貯金をおろしてから出国できればと思っていましたが、銀行ももう閉鎖されたのでお金を下ろすことはできません。
でも、そんなことはもういいのです。とにかく今は命と家族が大切です。どこへでも、たどり着いた国で必死に働いて稼いで人生を立て直します」
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2021/08/20 11:30
https://toyokeizai.net/articles/-/449536