NHK「フェイク・バスターズ 新型コロナウイルスと誤情報」(8月10日)は、新型コロナウイルスの感染拡大に対する最大の武器である、
ワクチン接種を阻む要因をさまざまな角度から光を当てて浮き彫りにした。

国内外の医師で構成するチームが正しい情報の発信によって対抗する、献身的な姿も描いた。

評論家の宇野常寛さんを司会者として、フェイクニュースに詳しいジャーナリストの古田大輔さん、
医療情報を発信している外科医の山本健人さんらをコメンテーターに迎えた。

外科医の山本さんはいう。「ネットで情報を収集する習慣があるのであれば、『フィルター・バブル』の危険性を知ったほうがよい」。

「フィルター・バブル(filter bubble)」とは、SNSによって同じアカウントばかりフォローしたり、
検索サイトで興味のある検索結果ばかりを読んでいたりすると、偏った情報に取り囲まれることをいう。

まるで泡(バブル)の中にいるように、自分が見たい情報しか見えなくなってしまう状態である。

番組では、夫のジュンと妻のユカリ(いずれも仮名)の間で起きた、コロナの誤情報にとらわれた妻を夫がいかにして、
正しい情報に引き戻すかがコミックタッチの絵とセリフで描かれた。

妻・ユカリ コロナワクチンは絶対に打たないでね。死ぬかもしれない。SNSでみんながいっている。

夫のジュンは、ユカリのSNSや交流サイトのタイムラインを見た。そこには誤情報があふれていた。

「コロナワクチンを打つと死にます」

「ウソばかりつく政治とメディア」

「ワクチン接種者が周囲に病気をまき散らす」

夫のジュンは次のように語る。

「とんでもないことを言っている人が妻のまわりにいっぱいいた。
(妻は)それに対してフォローしていたばかりではなく、『いいね』をつけているのを見て衝撃でした」と。

ワクチンに関する誤情報のなかで、最も拡散したのは「ワクチンと不妊」だろう。政府や専門家が否定しても広がっていった。

番組の取材チームとNHKのネット取材部門が分析をした結果、ワクチン不妊デマ≠フ発信者をたぐっていくと、約20人の発信者にたどり着いた。
彼らの発信がシェアやリツイートされて、今春から若者たちにデマが広がったのである。

さらに、この約20人が根拠としていたのは、ファイザー社の元副社長の誤った主張にあった。それはワクチン陰謀説≠ナある。

SNSビッグデータ解析の専門家である、東京大学院・工学研究科の鳥海不二夫教授は、デマを発信するグループには、主に3つあると指摘する。
第1は、世界の外交政策や日本政府を批判するグループ、第2は、犯罪やカルトに興味があるグループ。
そして、最後は、「アメリカは一部のエリートやメディアによって支配されている」と陰謀論を主張する「Qアノン」である。

鳥海教授の分析によると、ワクチン不妊′情報を1人で500回以上も発信していた人物もいた。鳥海教授は次のように語る。

「デマはデマの顔をしてやってこない。デマにだまされると思っていたほうがいい。
だまされても、新しい情報が入ったら、柔軟に考えを変えていかなければだめだ」と。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/24056

フェイク・バスターズ 新型コロナウイルスと誤情報
https://www.nhk.jp/p/ts/XKNJM21974/episode/te/MVRWG6P5Z8/