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「不人気の首相のうちに…」立民、菅おろし警戒

衆院選前に自民党総裁選が行われる見通しが強まる中、立憲民主党が自民内の「菅おろし」を警戒している。6月に内閣不信任決議案を提出するなど首相に退陣を迫ってきたとはいえ、本音では新型コロナウイルス対応の是非を争点に、菅義偉首相(自民党総裁)を相手に秋の衆院選を戦いたいからだ。

安住淳国対委員長は26日、総裁選が先行し、衆院選が10月21日の衆院議員任期満了の後になることについて、国会内で記者団に「任期を超えても議員バッジを着けて居座るということだ。(自民の)私事で延ばそうというのは国民にとっては許されない」と牽制(けんせい)した。福山哲郎幹事長は「感染拡大の最中に総裁選をやり、自分たちが担いだ首相を否定するようなことは非常に違和感がある」と主張する。

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が21、22両日に実施した合同世論調査で、菅内閣の支持率は32・1%となり最低を更新した。長らく「自民一強」に甘んじる野党にとって今が党勢拡大の千載一遇のチャンスといえる。

ただ、22日に投開票された首相のお膝元・横浜市長選で、首相に近い小此木八郎前国家公安委員長が立民推薦の山中竹春氏に大敗し、自民内で首相交代論が表面化した。すると安住氏は翌日、記者団に「首相の(市長選敗北の)責任を言う人はいるが、小此木さんが反対を押し切って出た選挙だから、結果責任を言うのはちょっと酷かなと思う」と語り、首相をかばった。

22日夜の山中氏の当選祝勝会では、地元経済界の有力者が「菅は辞めるんじゃないの。電話がかかってきたら『辞めろ』と言います」と語り、立民の青柳陽一郎衆院議員は「辞めるのは衆院選の後でいいと言っておいてください」と本音を口にした。

立民は昨年末まで、衆院選情勢調査に基づき議席増は難しいとみていたが、1月のコロナ第3波で潮目が変わり、4月の衆参3つの補欠選挙・再選挙では立民系候補が全勝した。以降、立民内では「不人気の菅首相のうちに」(幹部)と早期解散論が目立つ。衆院選が今、行われれば少なくても40議席は上積みできるという見方が強い。

ただ、旧民主党が政権奪取した平成21年と異なり、立民の政党支持率は低迷が続く。産経新聞社とFNNの合同世論調査では6・6%にすぎない。横浜市長選などの勝利は立民への期待ではなく、菅首相への不満の裏返しといえる。

立民中堅は「菅氏が万が一おろされて(現ワクチン担当相の)河野太郎首相や(前総務相の)高市早苗首相のもとで選挙をやられたら立民は失速する」と語る。(田中一世)

2021/8/26 21:53田中 一世
産経新聞