■有事において適切に使える制度とするために

冒頭に記載したように「退避を求める人たちが空港に着いておらず、退避希望者を運び出すことはできなかった」ことが報道されています。しかし空港外の市内には退避希望者がいるにもかかわらず、なぜ、自衛隊はその人達を運び出すことができないのでしょうか。

在外邦人輸送の条文84条の4を読むと、要件として、外務大臣からの依頼と、外務大臣と防衛大臣との協議により、「当該輸送を安全に実施することができると認める」ことが求められています。

そのため、すでにカーブル空港にいる人であれば輸送機に乗せることができるのですが、カーブル空港までの道程においては、現地の治安状況が輸送を安全に実施する状況にない以上は、退避希望者がいたとしても自衛隊が輸送を実施することができません。結果的に、退避を希望する現地邦人らは自力でなんとか空港までたどり着かねばならないのですが現実には極めて困難な状況にあるのだと推察されます。

本来であれば、現地において政権が事実上崩壊しているような事態においては、より危険度が高いわけですから、在外邦人保護を実施すべきであるにもかかわらず、皮肉なことに現地の政権が機能していないがゆえに要件を満たさないというのは、制度として矛盾が生じているともいえます。

在外邦人保護や在外邦人輸送といったような国民の権利を守る行動であって、私人の権利・自由を制限することによって、行政がその目的を達成する活動とは異なります。こうした行政の活動を「規制行政(侵害行政)」といい、「法律による行政」に基づき、法律で要件や効果を明確に定める必要があります。

他方で、軍隊は、国防を目的としており、その力は外国から侵略してくる勢力に対して向けられます。国民の権利・自由を制限する規制行政(侵害行政)とは異なるため、多くの国において軍隊が実力を行使する行動については法律等で規制を行っておらず、この点が軍隊と警察などの行政機関との根本的な差異となります。

自衛隊の行動には、防衛出動以外にも治安出動や海上警備行動といった警察権の行使としての行動もあるため、その手続・要件・効果などについては法律で規定する必要がありますが、在外邦人保護や在外邦人輸送については、国際法に則って行えば足りるので、国内法で規定しなくても構わないということも十分考えられるのです。■

■こうした法制度の歪みの根本には、自衛隊を正面から軍隊ではなくあくまで行政機関として位置づけざるを得ない日本国憲法との整合性を図らなくてはいけないという難題が存在します。

いずれにせよ、今回浮き彫りとなった課題に対し、いざというときに適切に使える制度として見直しを図っていかなくてはなりません。

一部引用
田上嘉一弁護士/陸上自衛隊三等陸佐(予備)
https://news.yahoo.co.jp/byline/tagamiyoshikazu/20210827-00255199
前スレ
https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1630113244/

自衛隊の行動
日本は法治国家であり、その政府機関の一つである自衛隊も法律に基づいて行動を行う。日本は、第二次世界大戦の影響により、軍事関係は法的な制約が大きい。
一般に国際法的な面で軍隊の行動は、「ネガティブリスト」方式で、「行ってはいけない行動」を主眼に規定されるのに対して、
自衛隊の行動は国内法的な面で「ポジティブリスト」方式であり、「行うとされる行動」が主眼に規定されている。法に規定されていない行動は、行い難くなっている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E3%81%AE%E8%A1%8C%E5%8B%95#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E6%B3%95%E6%B2%BB%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E3%81%A7,%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%84%E3%81%A6%E8%A1%8C%E5%8B%95%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%86%E3%80%82&text=%E4%B8%80%E8%88%AC%E3%81%AB%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%B3%95%E7%9A%84%E3%81%AA,%E3%81%AB%E8%A6%8F%E5%AE%9A%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82

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https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1620023334/
憲法9条の改正「必要」28%「必要はない」32%と拮抗、去年に比べ必要はないは5ポイントも減少 - NHK世論調査 2021/05
https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1620103214/