菅義偉首相と、自民党の二階俊博幹事長は25日、党本部で会談する。菅首相の地元・横浜市の市長選(22日投開票)は、「菅政権の信任投票」という側面もあっただけに、首相が全面支援した候補が惨敗した事実は深刻だ。菅政権による新型コロナウイルス対策への不満などから、「菅自民党=拒否される政党」になっている可能性がある。中堅・若手議員を中心に拡大する「首相交代」論。選挙分析に定評のある選挙プランナー、松田馨氏に、次期衆院選の現状について聞いたところ、「自民党70議席減」「自民党と公明党で過半数割れも」という衝撃的な結果が出た。

【表でみる】次の首相にふさわしいのは

 菅−二階会談は、首相の総裁任期満了(9月30日)と、衆院議員の任期満了(10月21日)が迫るなか、総裁選や衆院解散・総選挙の日程などについて協議するとみられる。

 菅首相は24日、記者団から新型コロナの緊急事態宣言の発令中に衆院解散に踏み切る可能性を問われ、「法律上はできると思う。ただ、コロナ対策最優先ということを今まで表明してきた」と語り、総裁選前の衆院解散を見送ることを示唆した。やはり、地元での選挙完敗が響いているのか。

 松田氏はまず、横浜市長選について分析した。

 「横浜市長選は、新型コロナの緊急事態宣言下で行われたが、投票率は49・05%と、前回より11・84ポイントも上昇した。これは、菅政権のコロナ対策に反発する無党派層が、感染の懸念がある中でもあえて投票に行き、菅政権に『ノー』を突き付けたといえる。NHKの出口調査では、投票へ行った無党派層の割合が、自民党支持層を上回っていた。立憲民主党が推薦した候補は無党派層の支持拡大で圧勝した。自民党は無党派層から支持されていない」

 松田氏は約1カ月前、菅首相のままで今秋に衆院解散したとの想定で、各党の獲得議席予測を夕刊フジで行った(7月19日発行)。自民党は現有276議席から「219議席」(57議席減)と、単独過半数(233議席)割れという結果だった。

 新型コロナ変異株(デルタ株)の感染拡大や、横浜市長選の結果などを受けて、松田氏に最新情勢を分析してもらった。

 「このままでは、菅政権に批判的な無党派層が投票へ行くことで、衆院選でも投票率が上がりそうだ。結果は、7月の議席予測よりも悪化して、自民党は70議席程度減らす可能性がある。エリア別では、東京や神奈川、大阪、北海道、新潟などで大苦戦するだろう。当然、公明党もあおりを食う。自公与党で過半数割れもあり得るだろう」

 菅首相の動静を見ると、休日返上で分単位の激務をこなしている。新型コロナの感染者数や死者数も欧米諸国に比べると少ない。外交・安全保障では失点はほぼない。ただ、新型コロナ変異株(デルタ株)の感染拡大が続くなか、野党やメディアの批判に対し、官僚原稿を棒読みするような発信では、国民の心には響かないようだ。

 選挙基盤の弱い自民党の中堅・若手議員からは、新首相を切望する意見が飛び交う。

 麻生派議員は「各種選挙で菅首相への応援要請がない。『選挙の顔』になっていない証拠だ。交代を求める声が上がるのは当然だ」と手厳しい。

 岸田派議員は「菅首相は『新型コロナ対策を失敗した人』というレッテルを貼られている」と危機感を隠さない。

 自民党は、局面打開のためにも総裁選について、党所属国会議員票(383票)と、全国の党員・党友票(383票)による「フルスペック」で実施する方針。複数の候補者による活発な論戦を目指すという。

 現時点で、菅首相のほか、岸田文雄前政調会長が出馬に向けて調整を進めている。下村博文政調会長と高市早苗前総務相は、出馬への意欲を表明している。

 つづく

夕刊フジ 8/28(土) 16:56
https://news.yahoo.co.jp/articles/1c27eef96c501f60b67f7dc276e1d27f2205753d