新型コロナウイルスの感染「第5波」で、全国的に自宅療養者が急増している。必要な医療を受けられずに死亡するケースも出ているが、
かつてない感染急拡大に、どこまで対応できるかは依然見通せない。

自宅療養者が21日時点で4428人と2週間あまりで6倍になった京都府で、
行政と連携して訪問診療を行う医師チームに同行取材した。

京都府に緊急事態宣言が発令された20日朝、チームが訪ねたのは京都市内の住宅。家族4人のうち20〜50代の3人が感染し、療養中だ。
防護服を着て訪ねると目立つため、医師と看護師の2人は玄関に入ってから防護服に着替え、室内に入った。

感染したのは、父親と2人の子供。20代長男は発症から約10日が経過したがせきと味覚障害を訴え、
「仕事に復帰しても大丈夫ですか」と不安を口にした。看護師が「検査結果次第では大丈夫ですよ」と声をかけると、安堵の表情を見せた。

その後訪ねた別の住宅では、女児を含む4人が感染。療養中の男性(34)は「いつ重症化してもおかしくないという不安はある。往診は心強い」と話した。

チームはこの日、夕方までに同市内の患者宅8軒を訪問。16人の容体を確認したが、ときには深夜まで及ぶこともある。

入院調整を担う府コントロールセンターが自宅療養者を把握し、
センターの要請を受けたよしき往診クリニック(京都市西京区)の守上佳樹院長(41)ら医師3人の複数チームが訪問する仕組み。

行政と民間医療機関が連携しての自宅療養者の訪問診療は、全国でも珍しいという。

府内では年末年始の第3波で、入院調整中だった高齢者が死亡。これを受け、同クリニックは2月から府と連携しての訪問診療を開始した。

第4波までは主に、高齢者や基礎疾患がある自宅療養者を診察したという。

24時間態勢で、点滴や酸素吸入も行う。重症化の恐れがある人は毎日訪問し、必要と判断すればセンターに入院の手配を依頼する。
これまでに約150人を診察し、うち30人が入院。亡くなった人はいない。

同クリニックの医師、国光克知さん(31)は「第5波は若年層の重症化が顕著。感染者数の規模も、もはや災害級だ」と語る。

往診するのはワクチン接種が進まない50代以下や、家庭内感染した人が大半だという。

帯同する看護師、村上成美(しげみ)さん(57)は「これからどんどん(感染者が)増えていくと思う」と危機感を募らせる。
血中酸素飽和度が低下した患者でも、府からの出動要請は数日後になるケースも出てきた。

今月中旬、国光医師が訪問した30代女性は、血中酸素飽和度が大幅に低下した状態で3日間経過していた。
「数分遅れていたら亡くなっていたかもしれない」状況で、すぐ救急搬送されたという。
https://www.sankeibiz.jp/econome/news/210829/ecb2108290700001-n1.htm

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