とうとう「パンドラの箱」が開き、永田町に大激震が走った。
菅義偉首相は9月3日午前、自民党の臨時役員会に出席し、17日告示の総裁選(29日投開票)には立候補しないことを表明した。

「官邸は朝、騒然としていましたが、いまは静まり返っています。菅政権がとうとう終わりましたね」(官邸関係者)

菅首相は官邸でぶら下がり取材に応じ、立候補見送りの理由について「新型コロナ対策に専念したい」と淡々と語り、
質問は受け付けず、立ち去った。菅首相は9月末に総裁任期が満了することに伴い、首相を辞任することになる。

「昨日まで強気に総裁選出馬すると言い張り、首相の座にこだわっていたのに不出馬になるとは衝撃だった。
『コロナ対策に専念したい』と言っても誰も信じませんよ。幹事長が決まらず、総裁選で勝てないので出馬しない、やめるんですよ」

こう話すのは、自民党の閣僚経験者だ。菅首相は6日に自民党役員人事を刷新し、低迷する支持率を浮揚させて総裁選に勝つ戦略だった。
しかし、目玉である二階俊博幹事長の後任がなかなか決まらなかった。

「6日までもう時間がない。火中の栗を拾う幹事長を受けてくれる人が本当にいるのか、とヒヤヒヤしていた。
不出馬に追い込まれたのは、菅首相を盛り立てようとする人が周りにおらず、党内からも見放されてしまったということでしょう」(同前)
また、横浜市長選でボロ負けして、地元神奈川県の自民党県連幹事長が会見で「菅首相の選挙活動はしない」と突き放したことも痛かった。

「地元のダメ出しも効いたのではないか。菅首相の力の源泉は、人事です。官房長官時代も政治家、官僚を人事で抑え込み、意のままに操った。
だが、最後は伝家の宝刀、人事を抜いたはいいが、みんなにそっぽを向かれた。策士、策に溺れるという感じがするね」(自民党の閣僚経験者)

党役員人事と内閣改造は行われず、二階幹事長は総裁選を予定通り実施する意向を示した。

現在、出馬表明しているのは、岸田派の岸田文雄会長だけだが、菅首相の不出馬で総裁選は一気に流動化してきた。
自民党で20年以上、政務調査会の調査役を務めた政治評論家の田村重信さんがこう話す。

「菅首相が辞めたので閣僚クラスの出馬もあるでしょう。今の自民党では選挙に勝てそうなのは、あの2人しかない」
2人というのは、河野太郎ワクチン担当相、小泉進次郎環境相だ。50歳代の河野氏、40歳代の小泉氏でまだ若い。

「自民党総裁なんてまだまだ。世代交代して、ベテラン議員から反発を受ける」との声も党内ではある。

「河野氏、小泉氏とも菅首相と同じ神奈川県の選挙区で個人的にも非常に親しい。菅首相と総裁選で一戦を交えるというのは、現職閣僚でもあり、2人ともできないでしょう。
だが、菅首相が総裁選に出馬しないのであれば、2人がその気になってもおかしくない。

自民党の多くの若手議員から、勝てる2人が総裁選に出馬することを望む声を私も聞いています。
党内で2人が若いと文句を言う人もたくさんいるでしょう。しかし、選挙に勝たなければ、政権維持ができません。そのためなら自民党はまとまります」(田村氏)

すでに出馬表明している岸田氏は一転、受けて立つ立場となった。

「岸田さんが菅、二階体制を見事に切り崩した。バックで安倍前首相の首相補佐官だった今井尚哉さんが動いた様子です。選挙プランナーも付いているようだ。
安倍、麻生両氏もいまは歩調を同じくしているように見えはしますが、次の政権でいかに自らがキングメーカーの座を確保するか、しか考えていません。
河野氏が出馬すれば、今回は2人が割れる可能性はありますね。まだ、いろんな動きがあるでしょう」(前出の官邸関係者)

岸田派所属の衆院議員も自信を持ってこう語る。

「菅首相が辞めると言い出して、岸田会長も『本当か』と声をあげ、信じられない表情だった。
正直、人気がない菅首相との一騎打ちなら勝てるだろうとの思いはあった。これで誰が出馬してくるかわからない状況になった。
だが、岸田会長は推薦人を自派閥で確保し、他の派閥にも支持の広がりを見せている。誰が出馬しても大丈夫だ」

気になるのは石破茂元幹事長の動きだ。自民党幹部がこう語る。

「石破さんを二階派が後押しする動きがでているようですね。候補者が乱立する総裁選になるかもしれない。面白くなりそうです」
https://news.yahoo.co.jp/articles/927abb66886e0541bcdb4eb7421eb965ff055768?page=1