過去の研究により、新型コロナウイルスのデルタ株は従来より「潜伏期間が短くウイルス量も1000倍以上に増加する」ことが分かっています。
新たに、中国の広東省で発生した集団感染の詳細な分析により、デルタ株は発症前の感染者がウイルスを拡散させる傾向が強いことが分かりました。

香港大学の疫学者であるベンジャミン・カウリング氏らの研究チームは、中国南部で発生したデルタ株が拡散する様子と疫学的な特徴を調べるため、
2021年5月から6月にかけて広東省で新型コロナウイルスのデルタ株に感染した101人の検査データを分析しました。

分析の結果、デルタ株に感染してから症状が出るまでの潜伏期間(incubation period)は平均5.8日間だったのに対し、
感染者がウイルス検査で陽性反応を示すまでの期間(latent period)は平均4日間と、1.8日間の開きがありました。

これは、「デルタ株に感染した人は症状が出る前の2日間にわたってウイルス粒子を排出していた」ということを意味するとのこと。

デルタ株が出現する前のデータを用いた従来の研究では、新型コロナウイルスに感染した人が陽性反応を示すまでの期間は5.5日間、
症状が出るまでの期間は6.3日間と、2つの期間の間は1日分もありませんでした。

つまり、デルタ株は症状が出る前の感染者がウイルスを拡散させる期間が、従来の2倍以上長い可能性があります。

また今回の研究では、「デルタ株に感染した人は従来株に感染した人に比べて体内のウイルス粒子の濃度が高い」ことや、
「デルタ株感染の73.9%は発症前の感染者によって引き起こされていた」ことも分かりました。

シンガポール国立感染症センターの感染症臨床医であるバーナビー・ヤング氏は、
「この研究結果は、デルタ株が従来株や他の変異株を圧倒して、世界的に優勢な株になった理由の裏付けになることでしょう」とコメントしています。

また、カウリング氏らがデルタ株の基本再生産数(R0)を算出した結果、値は6.4でした。
R0とは、ある感染症に感染しやすい集団の中で、1人の感染者がウイルスを拡散させる人数の平均値のことです。

カリフォルニア大学サンタクルーズ校の感染症研究者であるマーム・キルパトリック氏は、
「デルタ株のR0は6.4で、従来株の推定値である2〜4を大きく上回っています。つまり、デルタ株は従来株より動きが少し早いだけですが、感染力ははるかに高いということです」と述べました。

今回の研究では、デルタ株の猛威がより鮮明に示された一方で、ワクチンの有効性も改めて明確になりました。
というのも、新型コロナウイルスの不活化ワクチン接種を2回受けた人は、デルタ株に感染してもピーク時のウイルス濃度が低く、
他の人に感染させる確率も65%低かったからです。

このことから、研究チームは論文の中で「不活化ワクチンはデルタ株の感染を減少させるのに有効であると考えられるので、
パンデミックの脅威を軽減するためには、高いワクチン接種率を追求する必要があります」と結論づけました。
https://gigazine.net/news/20210908-sars-cov-2-variant-rise-rampant-fine/#:~:text=%E3%81%BE%E3%81%9F%E3%80%81%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%E6%B0%8F%E3%82%89%E3%81%8C%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BF%E6%A0%AA%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E5%86%8D%E7%94%9F%E7%94%A3%E6%95%B0(R0)%E3%82%92%E7%AE%97%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%80%81%E5%80%A4%E3%81%AF6.4%E3%81%A7%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82