マウスのES細胞(胚性幹細胞)から精子を形成するすべての過程を試験管レベルで再現できたと、京都大と横浜市立大のグループが発表した。グループによると、雄の生殖細胞ができる全過程を体外で再現したのは世界で初めてという。成果は、国際科学誌セル・ステム・セルに8日掲載される。

 京大高等研究院の斎藤通紀教授や石藏友紀子研究員のグループは既に、試験管レベルでES細胞から精子の基となる「精子幹細胞」を作製することに成功していた。しかし機能的に不十分で、精子幹細胞から精子を作ることは難しかった。


 グループは、精子幹細胞の前段階である「始原生殖細胞」の培養時間を長くするなどの工夫をして、生体に近い性質の精子幹細胞をES細胞から作製することに成功した。その後、新生児のマウスの精巣組織と精子幹細胞を一緒に培養することで精子を作製。顕微授精で子どもを誕生させ、精子としての機能を確認した。

 斎藤教授は「雄の生殖細胞ができていく過程の解明につながる知見だ。今後は、精巣組織を使わずに精子を作る技術の確立にも取り組みたい」と話している。

京都新聞 2021/9/8 01:00 (JST)
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