香山リカ氏、津田大介氏らがTwitterのトレンド入り 「書類送付」が意味するものとは 愛知県知事リコール妨害容疑 


 愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)を求めた署名運動を巡り、「署名者の個人情報は県広報で公開される」などと虚偽の情報をツイッターに載せて運動を妨害したとして、愛知県警が地方自治法違反(署名運動妨害)の疑いで、精神科医の香山リカ氏やジャーナリストの津田大介氏ら計4人を名古屋地検に書類送付したと8日報じられ、ツイッターのトレンド入りした。「書類送付」とは一般的になじみが薄い言葉だが、そもそもどんな意味なのか?警察は違法性をどう判断したのか?(デジタル編集部)

◆「起訴求める意見付けず」
 この記事を配信したのは共同通信。記事などによると、この問題は、運動を主導した美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長が昨年8〜9月に刑事告発。告発状によると香山氏は、署名者の個人情報が県の広報で公開されるなどとうその投稿をし、津田氏はこれらの投稿を拡散させたとしている。ほかに映画評論家町山智浩氏らも書類送付された。この書類送付の際、愛知県警は起訴を求める意見は付けなかったとみられる、とも報じている。
 この報道に対し、ツイッターでは多くのリツイートが拡散し、香山氏や津田氏らに対し「デマで騙す手法、悪質ですね」「こいつらがやったのか、厳罰に処すべきだ」といった非難の書き込みも多数見られる。
◆告発受理なら「必ず送付」
 だが、本当に愛知県警は「デマで騙す手法」と判断したと言えるのか。
 今回の愛知県警の書類送付は刑事訴訟法の246条に基づく。同条では「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない」としている。
 この際、事件を捜査した警察は起訴を求めるかどうかについて、▽厳重処分(起訴を求める)▽相当処分(警察としては起訴・不起訴の判断を検察官の判断に委ねる)▽寛大処分(起訴猶予を求める)▽しかるべき処分(起訴を求めない)ーの4段階に分けた意見をつけることができる。
 元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「警察は告発を受理するとその後、必ず書類を送付することになる。捜査しただけで嫌疑の疑いがないという認識の時でも検察庁には書類を送付する」と説明する。
 つまり、愛知県警は高須氏から行われた告発に対する捜査の結果について必ず検察庁に報告せねばならず、捜査した書類を検察庁に「送付」する手続きを取ったことになる。
◆「妨害に当たらぬ」と評価か
 若狭氏は、今回は起訴を求める意見は付けなかったとみられると報じられていることを受け、「警察は香山氏らがリコールの妨害に当たると法的評価はできないと考えたのではないか」とみる。今後、香山氏や津田氏らがどのように処分されるかは、検察官の判断となるが「一般的には検察官の判断は警察の意見と同じになることは多い」と話す。
 報道機関も警察が検察庁に書類を送る際にどのような意見を付けたかによって、言葉を使い分けて報道しているケースが多い。取材結果に基づき、警察が起訴を求めているようなケースでは「書類送検」、逆に検察が起訴を求めていない時は「書類送付」とする書き方だ。書類送付には、警察としては嫌疑の疑いは薄いとみており、法的手続きとして書類を検察庁に送ったとする意味合いが込められている。
 今回の件について、香山氏はツイッターで「高須克弥氏に地方自治法で告発された件についてですが、このような案件はすべて警察から検察に送致されることになってます。今回の“書類送検”はその手続き上のことと考え、必要があれば今後も捜査に協力するつもりです。警察は『起訴を求める意見は付けなかった』とのこと」とコメント。
 津田さんはツイッターに「書類送致(一般的には書類送検)とは、警察が必要な捜査を終え、検察に関係書類を送ったという意味でしかないので、特にコメントはありませんが、被疑者として捜査の対象になった場合たとえ不起訴になっても『前歴(前科ではない)』が付くので、理不尽だなと思います」とつづっている。

東京新聞 2021年9月9日 12時10分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/129854