朝日新聞2021.09.10
https://www.asahi.com/edua/article/14437464

大学の中には教職員や学生を対象に、職域接種を進めているところがあります。ただ、直面している課題は、接種を受ける学生が大学側の想定ほどには広がっていないことです。原因の一つと見られているのが、ネットで飛び交うさまざまな情報です。科学的に明らかに誤っているデマ情報も多く、こうした疑問や不安に答える説明会を開く大学も出てきました。

副反応、妊娠・出産などに質問が続々
昭和女子大学は9月9日、ワクチン接種についての誤解と不安を解消するため、学生向けの説明会をオンラインで開いた。

同大学では7月10日から、アメリカにあるキャンパス、昭和ボストンに留学予定の学生や教職員を対象に接種を始めたのを皮切りに、8月23日までキャンパス内で学生への職域接種を行ってきた。2回の接種を終えたのは全学生の約6割だった。

8月下旬から9月初めにかけて学生にアンケートしたところ、学生全体の約半数の回答の中で、ワクチン接種を1回受けた学生が80.9%、2回受けた学生が71.5%いた。その一方で、「接種を悩んでいる」「接種しない」と答えた学生が8.9%おり、「妊娠、出産に影響はないのか」「副反応は」などの質問が寄せられた。このため、大学としてこうした疑問や不安に答える機会を設けた。

9日の説明会では、学生からの質問に、昨年春から最前線でコロナの診療に当たってきた東邦大学医療センター大森病院の前田正医師が答えた。

質問が最も多かったのは、副反応に関することだ。「どんな副反応がどれくらい続くのか心配」「副反応に個人差があるのはどうしてか」「2回目の方が副反応がひどい理由は」「副反応を軽くするにはどうしたらいいか」など。「ワクチンを打っても副反応が出なかったが、効果があったのか心配」という質問もあった。前田医師は「副反応は免疫を得るためで、ある程度はあると思った方がいい。持続期間で多いのは翌日、長くても翌々日」「2回目は1回目より迅速に免疫細胞が反応するため、副反応が出やすい」「副反応がないからといって免疫がついていないことはない。倦怠感や痛みなどの副反応は個人の自覚的な部分が多い」などと答えた。

「5年後、10年後の長期的な影響はないか」「不妊の原因になるとの噂があるが本当か」「ファイザーとモデルナのどちらがいいか」「ワクチンの効果はどれくらい続くか」「打つか打たないか悩んでいる。アレルギーがあっても大丈夫か」「3回目の接種が必要なのか」など、大人も知りたい疑問が次々と出された。

前田医師は「巷ではワクチンによって遺伝情報が組み込まれるという噂があるが、遺伝子の核の中にmRNA(メッセンジャーRNA)は入れず、遺伝子が組み換えられることはあり得ない」「卵巣に入るのは0.1%以下で速やかに分解され、排出される。妊娠、出産に直接影響することは考えられない」「ファイザーとモデルナのどちらも大差ない。モデルナは発熱が強いといわれるが、誤差の範囲」「基礎疾患があっても基本的に問題ない。接種せずコロナにかかる方がリスクが高い」などと答えた。

「私は打ちたいが親が反対している。どう説得したらいいか」という質問もあった。前田医師は「話し合いができるなら、反対している人が気になっている点に関して、厚生労働省などの正確な情報を見てもらうのがいい」と答えた。

説明会は1時間余り。最後に小原奈津子学長が「根拠のないデマ情報が広がっているとニュースでも報道されている。何が本当かウソかわからず接種に不安を持っている人や、接種したが今後に不安を持っている人に聞いてほしいと思い、開催した。正しい情報を持ち、正しく理解することが大切。よく考えて判断してほしい」と話した。

同大学では、説明会の後、12日(2回目は10月10日)に、最後の職域接種を予定している。近畿大も6割止まり、動画で接種呼びかけ
国内の大学ではいち早く6月21日から、キャンパス内でワクチンの職域接種を行った近畿大学は、2回目の接種が8月6日で終了し、学生や教職員など約2万3500人が2回の接種を受けた。

対象になったのは、本部のある東大阪キャンパスと、農学部のある奈良キャンパスの学生らで、最大で1日2000人に接種した。対象学生に占める接種率は59.8%。学部別に見ると、薬学部68.7%、国際学部66.7%、建築学部63.4%などが高く、文系学部がやや低い「理高文低」の傾向があった。理系が多い大学院も68.2%と高かった。国際学部が高いのは、ワクチン接種を前提に9月中旬からアメリカへの海外留学を再開するためとみられる。

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