世界各国で新型コロナウイルスの収束が見通せない中、日本を含むアジア・太平洋地域各国がウイルスと共存する戦略に転換し始めた。
感染力の強い変異株「デルタ株」の広がりで、新規感染を極力抑え込むゼロコロナ戦略は頓挫。

重症化を防ぐ効果があるワクチン接種の進展で、医療の逼迫を避けつつ、日常生活再開と経済再生を目指す。

日本政府も行動制限を緩和する方針。条件付きとはいえ、緊急事態宣言下で酒類提供を容認するのは世界的にも異例だ。

シンガポールは国民の8割が2回接種を終えたが、デルタ株流行で接種後も感染する「ブレークスルー感染」が多数報告され
「ゼロにすることはもはや不可能」(リー・シェンロン首相)と判断。3回目接種も進めながら、海外からの入国者隔離措置などの規制を段階的に緩め、
人や情報、資金が集まるハブ(拠点)機能を維持したい考え。

オーストラリアではシドニー都市圏で6月下旬から続く都市封鎖が10月に解除される見通し。
モリソン政権は感染者数より重症者や入院患者の数を重視する戦略に転じ、16歳以上の2回目接種率が8割に達すれば、
入国禁止措置を段階的に緩和し、日米欧などとの自由往来を進める方針だ。

韓国も成人の8割が接種を完了した時点で方針転換を図る見通し。ベトナムも経済再生に向け行動制限の解除を模索する。
外国人の入国を原則禁止してきたニュージーランドも来年初めから、ワクチン2回接種を条件に、感染リスクの低い国からの隔離なし入国を受け入れる。

厳格な措置で抑え込みを図る中国では、一部識者からウイルスとの共存路線へ転換せざるを得ないとの声も上がるが、
来年2月の北京冬季五輪を控え、当局はゼロコロナ戦略を貫く構えだ。

日本は希望者へのワクチン2回目接種完了を見通す11月ごろ、行動制限を緩和する見通し。
医療への負荷を重視し、接種や陰性証明などを条件にイベントの人数や営業時間の制限を緩和する方針だ。

【ブレークスルー感染】感染症のワクチン接種完了後に得られた免疫をウイルスが突破し、陽性となる事例。
新型コロナウイルスでは、変異株「デルタ株」での報告が多く、日本でも確認されている。

接種後の時間の経過とともに発症や感染を防ぐ効果が低下することや、デルタ株の感染力が強いことが原因とみられている。
ワクチンの効果を高めようと、先進国を中心に「ブースター」と呼ばれる当初の規定回数を超える接種を実施したり、検討したりしている国が多い。
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