●1950年に菌を散布

「Business Insider」によれば、1950年9月20日、サンフランシスコの沖合にある米海軍の艦船が巨大なホースを使用し、街に向けて微生物入りの霧を散布したという。軍は生物兵器攻撃が都市の80万人の住民にどのように影響するかを実験していたというのだ。

 この実験ではセラチア菌(Serratia marcescens)と枯草菌(こそうきん、Bacillus subtilis)という2つの細菌が使われ、街を覆う細菌の霧によってサンフランシスコ住民の多くが病気になり、少なくとも1名が死亡したという。

「Discover Magazine」のレベッカ・クレストン氏によると、この実験は非倫理的な人体実験研究を規制する「ニュルンベルク綱領」の制定以来最大の違反行為の1つであるということだ。


●20年間継続
 しかもこの実験ははじまりに過ぎず、1949年から20年以上にわたり米軍は人口密集地域で239回の「細菌戦」実験を行っていたことが1970年代に大手紙などで報道され、議会証言でも詳細に語られているという。

 これらが公になった後、政府はこの実験の目的は生物兵器の使用を抑止した上で、それらに備えることであったと説明している。最初にアメリカ人を生物兵器にさらすことによって、アメリカ人に対する生物兵器の攻撃を抑止したかったということになる。しかし、つまるところ自国民を“実験台”にして各種のデータを収集したわけだ。

 軍による239回の生物学的および化学的戦争テストのうち、病原体が国中にどのように広がるかを確認するために中西部全体で行われたものもあるという。軍用機から霧状のものが都市に撒かれている理由を尋ねられたとき、軍は敵国の爆撃機から都市を隠す方法をテストしていると説明したのである。