日刊ゲンダイ 9/19(日) 9:06

近年は撮り鉄トラブルが頻繁に…(C)日刊ゲンダイ
【「表と裏」の法律知識】#101

 いわゆる「撮り鉄」の男性2人が、廃車になる「踊り子号」の車両を撮影するためJRの敷地内に立ち入ったことにより、鉄道営業法違反の疑いで9月に書類送検されたことがわかりました。

 今年3月、男性2人は日野市のJR中央線の鉄橋のふもとから侵入したようで、目撃者によると、線路すぐ横の草むらに10人以上の人が入り、電車が来るのを待ち構えていたようです。また、現場の状況をとらえた映像では、危険を察知し、緊急停止しようとする電車と、撮り鉄たちが散り散りに逃げていく姿が映っています。この立ち入りにより、「踊り子号」の前を走っていた電車を含め、およそ30分もの間、停車を余儀なくされたようです。

 ネットでは、マナーを守らない人は鉄道ファンをするべきではないとの声が相次ぎ、さらに警察の取り調べを受けた男性の1人が「高く売れるいい写真を撮りたかった」と商売目的であった旨の供述をしたため、批判が強まっています。

 しかし男性2人が刑事処罰されるとしても、鉄道営業法37条(線路無断立ち入り)の法定刑は科料、すなわち1万円未満の罰金(のようなもの)で極めて軽いのです。一方で、鉄道写真は1枚500〜5000円で取引されているようで、考えようによっては、科料を支払ってでも、売れる写真を撮影した方が得ということになってしまいます。

 これでは刑罰による犯罪抑止力がないに等しいともいえるので、行為に見合った刑罰に変えていく必要があります。

 この件以外にも、近年では相次ぐ撮り鉄トラブルが頻繁にネット動画に投稿されており、撮り鉄が線路や軌道敷内に入ったり、運転手や駅員に怒号を飛ばす映像もあります。捜査機関は、往来妨害罪や威力業務妨害罪での立件も積極的に行うことも検討すべきと思います。

(橋裕樹/弁護士)
https://news.yahoo.co.jp/articles/9b9f8a2842c44c3410e271f6a7cdeb61a09b439d