【北京=三塚聖平】中国の習近平政権は、岸田文雄次期政権の陣容を注視している。菅義偉政権下で日本が米国と対中圧力を強めたことに中国は反発しており、次期政権の出方を見極めて対日政策を組み立て直す構えだ。特に中国をにらんだ経済安全保障政策が強化されるか警戒している。

中国側は、政権運営の要となる自民党幹事長に甘利明税制調査会長を起用する方針が決まったことに注目する。甘利氏は、米中対立でも焦点の一つとなっている経済安保政策の旗振り役を務めてきたからだ。中国メディアは、甘利氏を「反中急先鋒(せんぽう)」などと形容して牽制(けんせい)している。

日中関係に詳しい北京のシンクタンク研究員は「菅政権は対中強硬姿勢を見せたが、水面下で二階俊博幹事長が日中関係を安定させていた。今後、岸田次期政権が対中関係をどう管理するのか、まだ見えない」と指摘する。

習政権は日本への反発を強めつつも、対米関係や来年2月の北京冬季五輪の開催をにらみ、さらなる関係悪化は望んでいない。中国インターネットメディアの澎湃(ほうはい)新聞は、来年に控える日中国交正常化50年の節目を挙げて、「歴史が岸田氏に重要なチャンスを与えるかもしれない」と関係改善の好機だと主張する識者の意見を伝えた。

一方で中国メディアは、「日本は『1年1首相』の運命を脱することができるか」などと岸田次期政権が短命に終わるかどうかに関心を寄せている。中国紙、新京報(電子版)は、岸田氏の権力基盤が盤石でないと指摘し、「再び『脆弱(ぜいじゃく)』な首相になるかもしれない」との見方を示した。その上で、岸田次期政権の対中政策について「調整する考えがあるとしても、力量と時間が足りないだろう」と指摘した。

産経ニュース 2021/9/30 20:31
https://www.sankei.com/article/20210930-7Q3G5T26VJNGTE2JZ2Y5MLLF6Y/