◇軽度の副反応はかなり高頻度
 重篤な副反応は少ないとしても、接種部位の腫れや痛み、発熱や全身倦怠(けんたい)感などの軽度な副反応は、かなり高い頻度で起こります。

 順天堂大学医学部の伊藤澄信客員教授が、医療従事者や自衛隊員を対象に行った大規模調査では、接種部位の痛みは80〜90%に見られました。また、発熱は2回目接種後に多く、ファイザー製で38%、モデルナ製で79%と高頻度でした。こうした症状については、ほとんどが2〜3日で軽快するとともに、症状が強い場合は、解熱鎮痛剤を服用すると早期に改善します。

 ところで、モデルナ製のワクチンは、接種後1週間ほどしてから接種した腕が腫れてくる現象が時に見られ、モデルナアームと呼ばれています。これも数日で軽快しますが、1週間ほどしてから起こる副反応のため、心配する人も少なくありません。なお、モデルナアームはファイザー製のワクチンでも起こることが明らかになっています。

 ◇重篤な副反応の発生はまれ

接種が開始された当初、アナフィラキシーという重篤なアレルギー反応の報告が相次ぎました。これはワクチンに含有される脂質成分へのアレルギーと考えられており、20〜30歳代の女性に多いとされています。しかし、接種者数が増えてくると、報告は次第に少なくなり、最近では、その頻度がファイザー製では100万回接種で4件になっています。これはインフルエンザワクチンに比べると少し高い数値ですが、まれな副反応と言っていいでしょう。

 アナフィラキシーが起きるのは接種後30分以内が多く、適切な処置をすることで、ほとんどが回復します。過去に薬や食べ物などでアレルギーを起こした人は、リスクが高くなることもあるので、事前の問診で必ず申告してください。

 接種者数が増えてから新たな副反応も明らかになってきました。それは心筋炎という心臓の炎症で、日本での頻度は100万回接種で1件とまれなものです。この副反応は20歳代前後の男性に多く、2回接種した数日後に胸痛などの症状で発症します。そのままにしておいても、ほとんどは回復しますが、心配な場合は医師の診察を受けるようにしてください。

 日本での接種者数は少ないですが、アストラゼネカ製のワクチンの場合、まれに血栓症を起こすことがあります。アストラゼネカ製はベクターワクチンという別のタイプで、軽度の副反応はmRNAワクチンとほぼ同じ頻度で発生します。これに加えて、若い世代では脳の血管などに血栓ができる副反応がまれに起こります。このため、アストラゼネカ製のワクチンは、原則的に40歳代以上に接種することになっています。