「ワクチン接種の進展が、大きな役割を果たしたことは間違いない」と、国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長は強調する。

ワクチンの2回接種を終えたのは、五輪前の7月20日時点では人口の24・6%だったが、2か月半で約2・5倍に増加。
10月7日時点で63・1%に達した。特に、先行して接種した65歳以上では、顕著な効果がみられた。

7月末までに8割が2回接種を済ませており、7〜8月だけで新規感染者を10万人以上、
死者を8000人以上抑制した可能性があるとの国の試算もある。

「ワクチンを打っていたので、昨年とは安心感が全然違った」。
東京都江東区の特別養護老人ホーム「北砂ホーム」の和田敬子施設長(69)は、今夏の「第5波」を振り返る。

同施設では昨春、入所者と職員51人が感染するクラスターが発生し、入所者5人が亡くなった。
その教訓から、今年4、5月に職員と入所者約200人の接種をすませた。

施設内の消毒や職員の外食自粛など感染対策も徹底し、第5波では入所者の感染をゼロに抑えた。
和田さんは「感染の不安はなくならないが、ワクチンで重症化しにくいことは心強い」と話す。

 
実際、ワクチン接種が早く進んだ地域ほど、感染者数の割合が少ない傾向があるとの指摘もある。

デジタル庁によると、医療従事者を除く2回接種率が64・8%(10月7日時点)と全国トップの群馬県では、
新規感染者数(同4日までの1週間)は10万人あたり3・8人。これに対し、接種率50・7%で最下位の沖縄県は21・5人で、5倍以上の開きがある。

政府は、11月の早い段階で希望者全員が2回接種を完了し、国民の8割に達すると見込んでいる。
第6波に備え、東京など大都市の感染者を低く抑えることも、全国への感染拡大の芽をつむことにつながる。

宮坂昌之・大阪大名誉教授(免疫学)は、「ワクチンの2回接種者をできるだけ増やすと同時に、
感染リスクの高い密接な接触を避ける対策を徹底できれば、一律に人出や経済活動を抑える必要はなくなる」との見方を示す。

ワクチンの効果を維持するには「65歳以上の高齢者や持病がある人など、感染を防ぐ抗体量が少ない人を中心に、
3回目となる追加接種を行う必要がある」と話している。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211008-OYT1T50365/