地方議員 6割が被害

 女性の議員や立候補者を個人的に誘ったり、体を触ったりする「票ハラスメント(票ハラ)」。19日公示の衆院選は、国や政党に対策を求める改正法が施行されて初の大型選挙となる。内閣府の調査に回答した地方議会の女性議員の約6割が被害を訴えており、女性の政治参加の促進に向け、有権者側の意識改革が求められている。

票失う不安

 「食事に行こう。デートしたい」。今回の衆院選に近畿地方の選挙区から立候補を予定する女性は、有権者の男性と2人きりになった時、そう誘われたことがある。ただ、選挙に臨む以上は、有権者と距離を置くわけにもいかない。女性は「不安があっても、1票を持つ人たちとの付き合いをむげには断れない」と打ち明ける。

 内閣府が4月に発表した報告書によると、地方議会の男女議員5513人から回答を得たアンケート調査では、有権者や支援者、ほかの議員らからハラスメントを受けた経験があるかを問う質問に答えた女性議員(1247人)の57・6%が「受けた」とした。具体的な内容としては、性的な言葉による嫌がらせや、性別に基づく侮辱的な発言を受けたとする人が多かった。

「住所教えて」 

 東京都議の女性は数年前の宴席で、地元の有力者の男性から体を触られた。嫌悪感はあったが、「選挙に勝つため、影響力がある人を味方に付けなければ。被害を訴え出ても、政治家の自分にはメリットがない」と考えて耐えた。

 宴席では他にも、酔った支援者らから卑わいな言葉をかけられがちだ。誘われれば顔を出さないわけにもいかず、体を触られそうになったら距離を取って自衛してきた。都議は「今のような状況では、女性が政治活動を敬遠してしまう。有権者の意識が変わらないと、女性議員は増えない」と指摘する。

 有権者の声を聞くため、連絡先の電話番号やメールアドレスを明かさざるを得ないという事情もある。

 別の女性都議のスマートフォンには、複数の男性から「住所を教えてほしい」とのメールなどが毎日届く。顔写真が送りつけられることもあり、「私の政策や訴えに共感して支援してくれているのだろうか」と疑問を感じることも多いという。

 この都議は「女性が嫌な思いをせず、安心して政治活動ができる世の中になってほしい」と願っている。

6月に法改正

 国会では今年6月、「政治分野における男女共同参画推進法」の改正法が成立し、施行された。議員や候補者へのセクハラのほか、妊娠・出産に関する嫌がらせ「マタニティー・ハラスメント」を防ぐため、国や政党に研修や相談体制を整備するよう求める内容だ。

 政府は対策マニュアルを作成中で、今後、政党や地方議会の研修で活用してもらう方針。超党派の議員連盟の事務局長として法改正に携わった矢田稚子参院議員(国民民主)は「『男性の多い政界で生きていく以上、ハラスメントは我慢すべきだ』という古い意識が男女ともに残っている。政党や国が改善に動き出せば、政治を志す女性は増えるはずだ」と話している。

2021/10/17 08:37 読売新聞
https://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20211017-567-OYT1T50033.html
 
主な被害
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