国家資格などの試験の受験料に値上げの波が押し寄せている。コロナ禍を受け、座席の間隔を空けた会場の確保や消毒・検温といった感染対策の費用がかさむためだ。受験生にとっては負担増だが、在宅勤務の定着で時間ができたことなどで、資格取得に目を向ける人は増えている。

 英語試験TOEICは10月分のテスト(リスニング&リーディング)から、受験料が税込み7810円になった。従来の6490円から2割増。密を避けつつ多くの人が受けられるように、これまで開催地を増やしたり、1日2回実施したりしてきた。会場費や感染対策費が膨らんだという。

 8月にあった国家資格・社会保険労務士の試験は、受験料が9千円から1万5千円と7割増の値上げに。前年実績をもとに今年の運営費を試算すると、引き上げが避けられなくなった。

 受験料の「コロナ値上げ」は、福祉人材の確保にも影を落としている。

 厚生労働省は社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士の3資格で、2021年度分から受験料を2〜3割引き上げた。「受験を避ける動きを生む」と福祉系団体などから反発の声もあがったが、来年1〜2月の試験は値上げ後の新たな料金で実施される。

 受験生の負担を抑えるため、独自の対応をとる自治体も現れた。兵庫県明石市は3資格の試験を今年度受ける市民や福祉施設在勤者向けに、値上げ分の3080〜6530円を補助する(社会福祉士と精神保健福祉士の同時受験だと最大8220円)。約400人分の予算を見込む市福祉局は「通常の値上げではこうした措置をとっていないが、今回はコロナ対策が理由のため、値上げ分の支援を決めた」と説明する。

今年度に受験料が値上げされた主な試験
・情報処理技術者  5700…(以下有料版で,残り2102文字)

朝日新聞 2021年11月18日 11時00分
https://www.asahi.com/articles/ASPCJ5JD9PC4ULFA02T.html?iref=comtop_7_01