犯罪最前線
少年少女がたむろ 歌舞伎町「トー横」で何が
2021/11/14 10:00
https://www.sankei.com/article/20211114-N6B6N2WSONKJDK2OIKJQ22VXFY/

日本一の歓楽街、東京・歌舞伎町に、家庭や学校に居場所のない10代前後の少年少女らが集まる一角がある。通称「トー横」。自然発生的にできたその界隈(かいわい)で少年らは何をするわけでもなく、「ただそこにたむろするだけ」と話す。SNSへの投稿を見てあこがれを持つ少年少女もいる一方で、飲酒や市販薬の過剰摂取などが横行し、少年少女を狙った犯罪も多発。とくに今年に入ってからは事件が相次いでいる。表面化し始めたトー横界隈の危うさに警察や周辺住民も危機感を強めている。

 「居場所ここしか」

「学校では友達ができない。ここに来れば誰かに会えて楽しい」。トー横に通う都内の女子高生(16)はそう話す。女子高生は土日を中心に、SNSを通じて出会った仲間とトー横周辺で過ごすという。中には本名を知らない相手もいるが「それくらいが心地いい」と話す。
周辺店舗の関係者によると、トー横は東京都新宿区歌舞伎町の複合施設「新宿東宝ビルの横」を語源として呼ばれ始めた。数年前から自然発生的に形成され、SNSなどで拡大していった。少年らは数人から数十人の集団で談笑したり、ダンスを踊って動画投稿アプリ「TikTok」で公開したりして過ごしている。
少年らの共通点は、家庭や学校に居場所がないことだ。集団で飲酒したり、市販薬の過剰摂取をしたりして、不安を解消しているとみられる。最近は地方在住者にもその存在が広がるなど、トー横の認知度は日増しに高まっている。
今年に入り、少年らの危うさは表面化し始めた。5月には10代の男女3人が歌舞伎町内のホテルから相次いで飛び降り自殺。6月には広島市の10代の少年が酒に酔った状態でホームレスの男性に暴行、傷害容疑で摘発された。
10月にはトー横に興味を持つ女子高生と性交し、その様子を撮影したとして、住所不定の20代の男が児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕されるなど、悪質な事件が相次いで発生している。

 なぜトー横に?

少年らはなぜトー横に集まり始めたのか。警視庁幹部は「周辺の環境浄化が原因の一つでないか」と話す。警視庁や都などは近年、積極的に治安維持のため警備人員の増加や違法店舗の摘発などに注力。結果的に歌舞伎町で活動していた暴力団員などの数は減少傾向にある。「街の危険が減り、逆に少年らが集まりやすくなってしまったのかもしれない」(警視庁幹部)という。
何が起きるか分からない「トー横界隈」に、周辺の店舗などは警戒感を強めている。近くで商売をする関係者は「一見すると普通の子供たち。ただ集まって踊ったりしているだけなのかと思ったら自殺者や逮捕者も出たのでどうにかしたいが難しい。商店街や地元の人たちで見回りや声掛けをするようにはしているが…」と頭を悩ませる。

 解決は難しい

トー横界隈の存在は警視庁も認知しており、対応に乗り出しているが、切り札的な解決策があるわけではないという。私服警官を投入した定期的な見回りや、周囲のコンビニなどに酒類販売時の年齢確認を徹底させるなど、地道な活動を続けている。
捜査関係者は「犯罪行為が起きればその都度対応することはできるが、根本的な解決は難しい」と打ち明ける。普段は「たむろしているだけ」のため、声かけや注意以上の対応は難しいといい、「例えば周辺を立ち入り禁止にしても、別の場所に移るだけだろう」とする。
少年らの心のケアには家庭や学校の協力も不可欠だが、別の捜査関係者は「地方から来ている子も多く、都内の学校に呼びかけても、効果が薄い」と漏らす。
こうした状況を踏まえ、警視庁は地元自治体や関連団体と連携し、対応を模索していく方針だ。捜査関係者は「トー横が犯罪の入り口になる可能性もあり、見過ごすわけにはいかない。少年らの健全育成のため、地道に対応していく」と力を込める。

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