ロシアやイラン、国際テロ組織と並ぶ「中国は4大脅威」MI6・ムーア長官が異例の演説 英BBCは習主席らのウイグル弾圧関与を報道 識者「現状のままでは日本は自由主義陣営から軽蔑される」
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 英国の対外情報機関、秘密情報部(MI6)のリチャード・ムーア長官が、中国をロシアやイラン、国際テロ組織と並ぶ4大脅威と名指しし、中国への対応を最優先と明言する異例の演説を行った。英メディアも習近平国家主席のウイグル問題への関与の疑いや、台湾への人権弾圧疑惑を報じるなど対中批判を強めている。近く米国主導の「民主主義サミット」も開かれるが、一連の動きの背景に何があるのか。

 スパイ映画「007」シリーズで、ジェームズ・ボンドが所属していることでも知られるMI6の長官が公の場で演説するのは異例だ。

 ムーア氏は11月30日に行った演説で、中国とロシア、イラン、国際テロ組織の脅威を「ビッグ4」と重視し、情報収集していると明かした。

 中国の情報機関について「高い能力を有し、広範囲な規模で英国とその友好国に対して、大規模な諜報活動を展開している」とし、「中国の台頭によって影響を受けた世界に適応することが、MI6にとって最大の優先事項だ」と断言した。

 一方で、「中国政府は自信過剰のあまり、国際情勢について誤算するリスクがある」「西側諸国のもろさに関する自らのプロパガンダを信じている」とも指摘した。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はこの演説について、「英国は北京五輪の外交的ボイコット問題で米国と並んで先頭に立つなど中国の脅威を認識しているが、一般国民は『地球の裏側の話題』としか考えていない節があり、問題意識をアピールする意味もあったのだろう。また、中国語の語学要員や情報部員の活動費、サイバー専門家の人件費や機材費などの予算を確保する意味もあるのではないか」との見方を示す。

 MI6に呼応するかのように、英BBCは立て続けに中国政府に批判的な報道を行った。習主席や李克強首相が新疆ウイグル自治区の弾圧に関与していたことを示唆する文書の写しが新たに公表されたと報じた。さらには中国が2016〜19年の間に台湾人600人超を海外で逮捕し、中国に強制送還させていた疑惑も報じた。

 米国と欧州連合(EU)は2日、中国問題に関するハイレベル対話を開催し、東・南シナ海や台湾海峡での「中国による一方的な行動に強い懸念を表明する」との共同声明を発表した。9、10日には米国主導の「民主主義サミット」がオンラインで開催予定で、台湾も招待されている。

 欧米諸国が対中姿勢で結束するなか、岸田文雄首相は外交的ボイコットについて「それぞれの国で立場や考えがある。日本は日本の立場で考える」と述べるにとどまった。黒井氏は「現状のままでは、自由主義陣営から軽蔑されるだろう」と警告する。

 首相の発信力が問われる状況だ。

夕刊フジ公式サイト 2021年12月3日
https://www.zakzak.co.jp/article/20211203-TAAK3RPNZRMPZIFUG6MWC6A7M4/