https://www.sankei.com/article/20211216-MJBGE47OOZK4VCXWN2HOQDJEGI/
 米上院は15日、2022会計年度(21年10月〜22年9月)の国防予算の大枠を決める国防権限法案を賛成多数で可決した。バイデン大統領の署名を経て成立する。
法案はインド太平洋地域での抑止力強化に向けた予算を増額するなど、覇権主義的な行動を強める中国への対抗姿勢を鮮明化。
バイデン政権に、来年行われる米海軍主催の環太平洋合同演習(リムパック)に台湾を招待するよう勧奨するなど台湾の防衛力を強化する取り組みの加速を求めた。

国防予算総額は前年度比で約3・6%増の約7682億ドル(約87兆円)。
この日の上院採決では88人が賛成、11人が反対した。下院は7日に可決している。

法案で目立つのは、覇権主義的な行動を強める中国との競争をにらんだ予算措置だ。
インド太平洋での米軍の抑止力を強化するため昨年新たに導入された基金「太平洋抑止構想」(PDI)には、前年度比で3倍超となる約71億ドルを充当。
バイデン政権が5月の予算教書で求めた額よりも20億ドル増額された。

国防総省はPDIを活用して、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約が19年に失効したのを受けて配備可能になった地上配備型中距離ミサイルや、
極超音速兵器の開発などを進めるとしており、議会としてもこれを強く後押しする。

「勧奨」という形ながら、世界最大規模の海上軍事演習であるリムパックに台湾を招待してその防衛力強化を支えるべきだと明記したことにも、
中国の脅威に対する米議会の強い危機感が表れた。

中国は、軍用機を台湾の防空識別圏(ADIZ)に繰り返し進入させたり、台湾の周辺海域での演習を活発化させたりして、台湾への威圧を強めている。
こうした状況について米議会の超党派諮問機関は11月に発表した年次報告書で「中台間の紛争抑止が危うい不確実性の時期にある」と指摘し、
同盟国や域内のパートナーと協力することで総合的な抑止力を堅持するよう提言した。
今回の国防権限法案も、これと同様の認識に基づいているといえる。

同法案は一方、人権侵害が続く中国・新疆ウイグル自治区での強制労働による製品を国防総省が調達することを禁止。
中国が人工知能(AI)やサイバー戦能力の強化を進めていることなどを念頭に、先端技術の研究・開発予算に大幅な上乗せも認めるなど、
あらゆる面で中国との競争に備える姿勢を示した。