「余った生乳5000トンはバターにすれば廃棄せずに済むのに」乳業業界の回答とは?
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2021年12月14日、金子原二郎農林水産相は、生乳の廃棄が5,000トンという過去最大規模に及ぶ可能性を示し、業界と連携して消費喚起に取り組むと述べた。
このことが報じられた際、「なぜ余った生乳をバターなどに加工できないのか」という声があった。乳製品に加工しておけば廃棄する必要はないのに、ということだ。

これについて、業界団体のJミルクの回答を、Q&A方式でお伝えする。

余った生乳はバターにすれば廃棄せずに済む?
ー「余った生乳はバターなどにすれば捨てないで済む」という声がありますが?

Jミルク:日頃から、バターなどの乳製品に加工しています。
飲用向けの牛乳の需要が多いとバターなどの製造量を減らし、飲用牛乳の需要が減ると増えます。
バターや脱脂粉乳は、いわば、生乳需給の調整弁の役割をはたしているのです。
例年、年末年始は飲用牛乳が減るため、バターや脱脂粉乳を多く製造します。
でも、2021年は、生乳料供給量は処理能力を大幅に上回り、全国の乳製品工場をフル稼働しても、その製造能力を超えてしまう可能性が高いのです。
それで、処理しきれない生乳が発生してしまうと懸念されています。

あとがき
「バターにすればいい」という声は今回の報道でよく見られた。ただ、酪農家が得る利益は、飲用より加工用の方が安くなるという。
安易に「余ったらバターにすればいい」という問題ではないのではないか。

生乳よりはバターの方が飲食可能な期間は長いものの、作ったバターの在庫が長期間はけることがなければ、それらは、いずれ賞味期限が近づいてきて、廃棄の可能性が出てしまう。
実際、2020年は、コロナ禍で需要が落ちたため、乳業メーカーにはすでに賞味期限が迫ったバターの在庫があり、それらの廃棄の可能性もありうると考えられる。

賞味期限はおいしさのめやすに過ぎないので、家庭内なら、賞味期限が過ぎても、自己判断で消費することができる。
販売者が、賞味期限が過ぎたバターを積極的に売るとは考え難い。

規格から外れて出荷できない果物を「捨てないでジュースやジャムにすればいい」という声があるが、果物では、生食と比べて、加工用の価格は10分の1程度安くなる場合もあり、生産者が得られる利益は大幅に落ちてしまう。
また、食品衛生法にのっとった加工場を作る必要があり、規格外の果物をジャムに加工して販売しようとしたある果物生産者は「保健所の要請に従った設備を作ると250万円かかるから諦めた」と話していた。

https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20211216-00272886