「僕はサラリーマンですが、彼女は事業をやっていて仕事関係で知り合いました。素敵な女性だなあと思っていたら、雑談の中で『私はシンママだから』という言葉が出た。シングルならつきあいたいと思い、デートを申し込んだのがきっかけで親しくなっていきました。ただ、彼女の優先順位は当時、12歳だった娘。彼女の実母が同居して娘の面倒も見ていてくれたようです。デートには応じてくれても、1年ほどは家につれていってはくれなかった」

 1年たったとき、「娘に会ってみる?」と彩乃さんから言われ、透さんは緊張したという。「あくまでも私の友だちとして紹介するから、変に緊張しないで」と忠告されたが、透さんは彩乃さんとの結婚を望んでいた。緊張するのは当たり前だ。まして娘は感性過敏な10代前半である。

「ときどき勉強も見ました。彼女は理数系が得意だったので、将来、何になりたいのかと効いたら物理学の研究者だという。すごい子だなと思いました」

 そうやって娘の信頼を勝ち得ていった透さんは、最初のデートから3年が経過したころ、彩乃さんと結婚した。同時に娘とも養子縁組をし、名実ともに家族となった。

「だからといって父親だと思わなくていい。今まで通り、おじさんでいいよと娘に言ったら、娘はしばらく考えていましたが、『じゃあ、名前が透だから、とーちゃんでどう? 他人からは“父ちゃん”に聞こえるし、ちょうどいいんじゃない?』って。妻とも笑いながら、それはいいねと。妻の母もいい人で、家族4人、仲良く暮らしていたんです」

「そんなとき義母が体調を崩して入院したんです。彩乃は再び、事業拡大に動いていた。僕がなんとか時間を作り出して息子の面倒を見ることにしました。娘は『私も手伝うから大丈夫』と妻には言っていたようです。ところが……」

「思い出したくないんです。娘のためにも。ただ、話すと決めて来たので……。ある日、息子を寝かしつけてからリビングに戻ってくると、娘が『ねえ、とうちゃん』と話しかけてきた。どうしたと聞くと、僕の隣に移ってきてしなだれかかってきたんです。彼女は風呂上がりで、シャンプーの匂いがぷんと漂ってきました。手足が長くてきれいでね。『私、女として魅力ない?』と娘が言う。そんなことないよ、これから大人の女になったらきっとモテると思うよというと、『本当?』と僕の顔を覗き込む。『やめなさい』と言うのが精一杯でした。彼女にいきなりキスされて、思わず立ち上がった。『きみは僕の娘だよ』と大声を出したら、『女として見てよ』って。何を言ってるんだ、僕はきみのお母さんの夫なんだよと。『わかってるわよ、そんなこと。だけど好きなの』と言われて頭がこんがらがりました。そんなはずはない。からかっているだけだと思いましたが、彼女があまりに真剣に言うのと、目にいっぱい涙をためていたんです。『この子は孤独なんだ』と感じたから、しっかりハグしました。『娘として愛してるよ』と。だけど彼女は納得しなかった。そのままプイと家を出て行ってしまったんです」

「17歳の娘が義理の父親を誘惑する……ドラマならありそうですけど、自分の身にそういうことがふりかかってくるとは、なんともいえない衝撃でしたね。それに補導されたことが重なって。彩乃は怒っていましたが、娘は『ごめんなさい』と素直に謝っていました。それからしばらくはおとなしくしていたので安心していたんですが」

 ある日、仕事が終わって会社を出ると、ひとりの若い女性が近づいてきた。そして「みこちゃん(娘の呼び名)の友だちで、要子といいます。みこちゃんのおとうさんですよね」と話しかけられた。

「ちょっとみこちゃんのことで話がある、相談に乗ってもらえないかと言われまして。行きましたよ、娘の身の上に今度は何があったのかと。要子は僕をホテルのバーに誘いました」

平然としている娘に覚えた恐怖

 要子という女性が言うには、透さんの娘が自分の恋人にストーカー行為をしている、と。だが透さんには、そのころの娘の様子から、そんなことをしているとは思えなかった。

「要子という女は、やたらと酒を勧めてくるんです。話の内容が重かったせいもあって、僕も空きっ腹にどんどん飲んでしまった。気づいたらホテルの部屋にいました。そのあたりの記憶がないんですが、どうやら要子と関係を持ってしまったらしい。使い終わった避妊具まで見せられました。何がなんだかよくわからないままに、要子がしがみついてきて、その“女の匂い”にくらくらして、要子と関係をもってしまった。あの夜はどうかしていたんだと思います」
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