多様な性のあり方について社会で認識が広まりつつある中、男性同士の結婚相談所「ベストリアン」が神戸市中央区に誕生した。経営するのは、兵庫県尼崎市でパートナーシップ宣誓をした男性カップル。同性同士の結婚相談所はあるが、当事者が経営するのは全国的にも珍しい。(高田康夫)

 元看護師の田辺義宗(よしむね)さん(35)と、教育関係の会社を経営する新井智尊(ともたか)さん(40)。2人は昨年7月、大阪の結婚相談所を通じて知り合い、お互いを生涯のパートナーとして認める仲になった。

 男性同士の出会いは日常生活の中ではほとんどないという。2人は結婚相談所で出会った経験から、もっと相談しやすく、健全でまじめな出会いの場をつくろうと話し合い、今年6月にベストリアンを神戸にオープンさせた。

 会員になれば、月1〜2人を紹介。プロフィルを見て興味を引かれれば、実際に会って10〜15分ほど話してもらう。お互いに気に入ればさらに話す時間を長くし、交際に発展すれば「卒業」となる。月会費だけで無理なく婚活できるようにする。

 「私たちゲイカップルが相談に乗ることで、気持ちが共有でき、悩みなども気兼ねなく話してもらえる」と新井さん。2人の姿を見て「理想の2人ですね」と婚活に意欲を燃やす会員もいるという。

 現在、海外の多くの国で認められている同性婚も、日本の法律では認められていない。兵庫県内では阪神間の市町や明石市でパートナーシップ制度が導入されており、2人は10月、尼崎市でパートナーシップ宣誓をした。

 「神戸で男性同士の結婚相談所を開くことで、まだ制度がない神戸市を変えることができるかもしれない」と新井さん。田辺さんも「トランスジェンダーなどの人たちも含め、多様な性があることを知ってほしい」と願う。

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■「結婚相当」と認定、兵庫県内は8市1町/パートナーシップ制、全国で拡大

 同性カップルらを結婚相当の関係と認める「パートナーシップ制度」を導入する自治体は増え続けている。東京都渋谷区と性的少数者を支援するNPO法人「虹色ダイバーシティ」の調査によると、10月11日時点で全国の130自治体が導入、9月末時点で計2277組がパートナーシップを宣誓している。

 兵庫県内では2016年6月に宝塚市が導入し、三田、尼崎、伊丹、芦屋、川西、明石、西宮の各市と猪名川町が続いて制度化。姫路市も導入を検討しており、12月20日から制度案についてのパブリックコメント(意見公募)を実施している。

 制度を導入している市町では、家族として市町営住宅に入居でき、兵庫県も制度がある市町に限り、男女のカップルと同様に県営住宅への入居を認めている。

 ただ、宣誓しているカップルでも、法律で結婚が認められていないため、「アパートやマンションを一緒に借りにくい」「相手が病気やけがのとき、手術の許可ができない」などの課題もある。国が同性婚を認めないことの是非が問われた訴訟で、札幌地裁は3月、「性的指向に基づく、不合理な差別に当たる」とし、法の下の平等を定めた憲法14条に反するとの初判断を示した。

神戸新聞NEXT 2021/12/28 15:00
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202112/sp/0014949478.shtml