米疾病対策センター(CDC)が新型コロナウイルス感染防止の指針を改定し、
無症状の感染者の隔離期間を10日から5日に短縮したことを巡り、専門家から批判の声が出ている。
これでは感染防止の効果がなくなり、新変異株オミクロン株の拡大によって既に記録的水準にある米国内の感染者数をさらに増大させかねないというのが理由だ。

CDCは、隔離終了後も5日間は他者と接触する場面でのマスク着用を求めている。こうした指針改定に踏み切った背景には、
無症状者や感染していない濃厚接触者まで10日の隔離措置を続ければ、今後数週間のうちにさまざまな業界で
自宅にとどまらざるを得なくなる働き手がもっと増えてしまうという事情がある。

科学者が主に懸念しているのは、新たな指針がワクチン接種者と未接種者を区別せず、
症状回復まで人によってかなり差がある点に配慮していない点だ。

隔離を終えて職場や社会に復帰する前に、もう感染力がないと確認するための検査も義務付けていない。

スクリプス・トランスレーショナル研究所のエリック・トポル所長は「ワクチン未接種者はウイルスが消えて感染力がなくなるまでにずっと長い時間がかかる。
ウイルスがいなくなるまである人は1日でも、別の人は1週間かそれ以上になる」と述べた。

トポル氏からみれば、新指針はCDCがこれまでに打ち出した中で最低の内容で、
科学的根拠に従ってパンデミックを抑制するというバイデン政権の約束を無視しているという。

同氏や他の専門家は、5日間の隔離とワクチン接種・未接種者を区別しない扱い、
隔離終了時の検査義務なしというやり方の正しさを裏付ける、オミクロン株の動きの面からの材料は不十分だと指摘している。


こうした中でCDCの新指針は、不用意に感染者を増やしかねないと警告する声も聞かれる。

ブラウン大学のメーガン・ラニー公衆衛生学部長は今回の指針について、5月にCDCが示してさんざん批判された勧告と同じだとみている。
この勧告は、ワクチン接種を終えた人は屋内公共スペースでマスクを外してもよいとする内容で、結果的に多くの未接種者まで屋内でマスクをしなくなり、
新規感染者増加につながった公算が大きい。

CDCの狙いは、マスクを外せるという動機が国民に積極的なワクチン接種を促す点にあったが、
大半が屋内のマスク着用義務に反対していた未接種者がその義務を守るということを当てにしていた。

同じように新指針も、5日間の隔離終了後に検査をせず、感染者が誠実にあと5日マスクをつけると想定している。
しかしラニー氏は「人々は現在、マスクを着用していないという事実が分かっている」と話す。

そこで迅速抗原検査で陰性が証明された無症状ないし軽症の感染者のみ、隔離期間を短縮するという方法なら、妥当性が高まるだろう。

サスカチュワン大学のウイルス学者アンジェラ・ラスムセン氏は、そうしたやり方を推奨すれば誰もが混乱する悪い指針が、
科学的証拠に基づく非常に合理的な指針に変わっていくとの見方を示した。

もっともラニー氏によると、検査キットの供給不足が続いている以上、迅速抗原検査の義務化は「ほぼ絵空事」だ。科学上の理想と現実の世界は別物だという。
https://jp.reuters.com/article/analysis-covid-us-idJPKBN2J9056