判決文な

最判令和4年1月20日より
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/869/090869_hanrei.pdf

1 不正指令電磁的記録に関する罪は,電子計算機において使用者の意図に反し
て実行される不正プログラムが社会に被害を与え深刻な問題となっていることを受
け,電子計算機による情報処理のためのプログラムが,「意図に沿うべき動作をさ
せず,又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令」を与えるものではない
という社会一般の信頼を保護し,ひいては電子計算機の社会的機能を保護するため
に,反意図性があり,社会的に許容し得ない不正性のある指令を与えるプログラム
の作成,提供,保管等を,一定の要件の下に処罰するものである。

反意図性は,当該プログラムについて一般の使用者が認識すべき動作
と実際の動作が異なる場合に肯定されるものと解するのが相当であり,一般の使用
者が認識すべき動作の認定に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,プ
ログラムに付された名称,動作に関する説明の内容,想定される当該プログラムの
利用方法等を考慮する必要がある。
また,不正性は,電子計算機による情報処理に対する社会一般の信頼を保護し,
電子計算機の社会的機能を保護するという観点から,社会的に許容し得ないプログ
ラムについて肯定されるものと解するのが相当であり,その判断に当たっては,当
該プログラムの動作の内容に加え,その動作が電子計算機の機能や電子計算機によ
る情報処理に与える影響の有無・程度,当該プログラムの利用方法等を考慮する必
要がある。

一般的なウェブサイトにおいて,運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みとして
広告表示プログラムが広く実行されている実情に照らせば,一般の使用者におい
て,ウェブサイト閲覧中に,閲覧者の電子計算機を一定程度使用して運営者が利益
を得るプログラムが実行され得ることは,想定の範囲内であるともいえる。
しかしながら,そのようなプログラムとして,本件プログラムコードの動作を一
般の使用者が認識すべきといえるか否かについてみると,Xは,閲覧中にマイニン
グが行われることについて同意を得る仕様になっておらず,マイニングに関する説
明やマイニングが行われていることの表示もなかったこと,ウェブサイトの収益方
法として閲覧者の電子計算機にマイニングを行わせるという仕組みは一般の使用者
に認知されていなかったことといった事情がある。これらの事情によれば,本件プ
ログラムコードの動作を一般の使用者が認識すべきとはいえず,反意図性が認めら
れる。