新型コロナウイルスに関する根拠のない偽情報が、人の生活や社会にどのような影響をもたらすのかについて、さまざまな研究が行われてきました。
いわゆるデマ情報や陰謀論の多くは感染リスクに対する人々の関心を低下させ、感染対策に関連した行動を抑制し、ワクチンの接種率を低下させる可能性が報告されています。

コロナ禍においてはまた、抑うつ症状(うつ病)を患う人も増加したことが知られています。

社会環境の急激な変化が、その一因かもしれません。抑うつ症状が出ている間は物事を否定的にとらえがちです。
心理的に安定していれば気にも留めない偽情報も、抑うつ状態では容易に信じてしまうかもしれません。

そんな中、新型コロナウイルスワクチンに関する偽情報への態度と、抑うつ症状の関連を検討した研究論文が、
米国医師会が発行しているオープンアクセスジャーナル誌に2022年1月4日付で掲載されました。

この研究では、インターネット調査に参加した米国人1万5464人(平均47.9歳、男性36.4%)が対象となりました。
参加者のうち、4164人(26.9%)が抑うつ症状を認め、2964人(19.2%)が、新型コロナウイルスワクチンに関連した偽情報を支持していました。

解析の結果、ワクチンに関連した偽情報を支持する確率は、抑うつ症状のない人に比べて、抑うつ症状のある人で、2.15倍高いことが示されました。
また、偽情報を支持していた人は、偽情報を支持していない人に比べて、ワクチンの接種をする確率が55%低下しました。

論文著者らは「偽情報を減らすことに関心が向けられがちだが、同時に偽情報の需要を減らすこと、
あるいは否定的な感情に対するアプローチを考案することが有用かもしれない」と結論しています。
https://hc.nikkan-gendai.com/articles/277205