■トランプ主義の復権を目指す?

大物投資家のピーター・ティールが、2005年から務めていたメタ(旧フェイスブック)の取締役を退任すると発表した。米誌「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」は、「ティールがかねてから望んでいた極右政治に全面的に取り組めるようになるだろう」と報じる。

決済サービス「ペイパル」やデータ分析企業「パランティア」の共同創業者であるティールは、当時のフェイスブックにおける初めての外部投資家であり、同社CEOマーク・ザッカーバーグと共に巨大SNSへの成長を導いた。その傍らで、トランプ元大統領が当選した際には政権移行チームのメンバーを務め、私的にはSNSに批判的な立場であることでも知られる。

2021年1月6日に起きた米国会議事堂襲撃事件についても、ティールとザッカーバーグの反応は対照的だ。

米政治メディア「ポリティコ」のアレックス・アイゼンシュタット記者によれば、ティールはトランプの弾劾を支持した共和党のリズ・チェイニー下院議員を「反逆者」と評したという。ティールはまた、今年に中間選挙でチェイニーの対立候補になるハリエット・ヘージマンの選挙戦を支援している。アイゼンシュタットによれば、ヘージマンの資金調達パーティでティールは次のような発言をしたという。

「左翼を打ち負かすには、共和党から始める必要があります。いくつか問題があり、まずそこからきれいにしないといけません」

一方で、ザッカーバーグは議事堂への攻撃を「我々の歴史における不名誉な瞬間」だとして、トランプを非難する姿勢を明確にした。

■ザッカーバーグを敵視する政治家をサポート

ティールに近い人物によれば、彼が注力するのは11月の中間選挙だという。この選挙には、ティールが支持する右派政治家が出馬する予定だ。

まず、オハイオ州選出の上院議員に立候補するJ・D・バンス。バンスは2021年に放映されたテレビ広告のなかで、ザッカーバーグの写真が映し出されるなか「支配層はアメリカ国民のことを気にかけてはいない」と批判した。にもかかわらず、2021年3月、ティールはバンスに1000万ドル(約11億円)もの献金をしている。バンスは以前にティールのベンチャーキャピタル企業で勤めていた。

バンスへの寄付から1ヵ月後、ティールは、アリゾナ州選出の上院議員候補であるブレイク・マスターズにも1000万ドルの小切手を送った。マスターズはバンスと同様にメタをはじめとするハイテク産業を敵とみなす政治家だ。ティールとマスターズは『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか(NHK出版)』の共同著者でもある。

英「フィナンシャル・タイムズ」紙は、ティールによる一連の献金活動をまとめている。それによれば、2016年には100万ドル(約1億1000万円)以上をトランプ派に費やし、2021年も共和党の委員会に約8万6000ドル(約990万円)を寄付したとされる。

ブルームバーグ・ニュースはティールの側近によるコメントを紹介。ティールは「メタにとって気が散るような存在になるのを避けるために役員の職を辞する」と話していたと書かれている。

ザッカーバーグは、今回の退任に伴う声明で「ティールがある時点でほかの関心ごとに時間を割くことになるのは承知していた」と明かしている。今年の中間選挙では、ティールの暗躍に注目が集まりそうだ。

2/10(木) 17:30配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/07675b8eb572aa27120dacb1949edd230425142b
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