“ニホンウナギ稚魚 捕食されてエラから脱出”長崎大など発見

*ソース元にニュース画像あり*

http://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20220216/5030014121.html
※NHKローカルニュースは元記事が消えるのが早いので御注意を

長崎大学などの研究グループは、絶滅危惧種に指定されているニホンウナギの稚魚が、
魚に補食された際、その魚のエラの隙間を通って口の外に脱出していたことを発見したと発表しました。
研究グループでは、今後、研究を進めて、放流したニホンウナギの稚魚が
生き残る可能性を高めていくために貢献できればと話しています。

長崎大学水産・環境科学総合研究科の河端雄毅准教授らの研究グループは、ニホンウナギが
絶滅危惧種に指定されるなど資源量が著しく減少しているにも関わらず、
その回避行動について直接調べた研究がないことに着目しました。

研究グループでは、ニホンウナギの稚魚と稚魚を食べる魚、ドンコを同じ水槽に入れ、
その攻防を高速度カメラで観察したところ、ドンコに捕食されたはずの稚魚が
しばらくした後に水槽内で泳いでいるのを確認したということです。
理由を調べたところ、食べられたニホンウナギの稚魚の半数以上がドンコのエラの隙間から
脱出している様子が撮影できたということです。
研究グループによりますと、ニホンウナギの稚魚がエラから脱出する映像を捉えたのは世界初だということです。

発見した長崎大学大学院博士前期課程の長谷川悠波さんは
「さらに研究を進めて、稚魚のどんな個体が
抜け出しやすいかや、抜け出しやすい大きさなどがわかってくれば、
今後、放流事業での生き残りの確率を上げることなどに貢献していけるのではないか」と話しています。

研究に取り組んだ長谷川さんによりますと、今回の実験ではウナギの稚魚54匹中、
半数以上の28匹が捕食された後、エラの隙間から脱出したということです。
いずれのウナギも頭の部分からではなく、いわば後ろ向きに尻尾から抜け出すという興味深い特徴があったということです。
頭からではなく尻尾から抜け出したはっきりとした理由はわかっていませんが、
ウナギは後ろ向きに遊泳することを得意としていて、天敵が現れると
後ろ向きにニョロニョロ逃げるという特徴が見られるため「この特徴と関連しているかもしれない」としています。

また、河端准教授らは今回の結果について、3つの点で意義があると指摘しています。
1つ目は、行動自体のおもしろさだと言います。
捕食された後も生き残る生き物は多数いるものの、ほとんどは貝のように
固い殻で守られて消化されずに排出される受動的なものだということです。

その意味で、ウナギの稚魚が能動的に脱出するということは、
魚類以外の分類を含めても非常に珍しい行動だと言えるということです。

2つ目は、ウナギのニョロニョロとした細長い形への進化を理解するのにつながる可能性があることだと指摘します。
細長い形をした生き物はほかにもいますが、生き残りや繁殖のメリットについては、
狭い隙間が利用できることや穴を掘るのに有利になることが仮説として挙げられているだけです。

河端准教授らは、今後、研究の幅を広げ、様々な細長い生き物を捕食者に食べさせる実験を行うことで、
捕食者の口の中からの脱出が細長い形への進化を促したという仮説を検証できる可能性があるとしています。

そして、3つ目が資源の回復に役立つ可能性があるという点です。
ニホンウナギの資源回復策のひとつとして、全国的に養殖ウナギの放流が行われていますが、
性別がオスに偏るほか、大型の放流魚は成長が悪いなどの課題を抱えているということです。

このため、最近は、より小型の個体の放流が推奨され始めていますが、
一般的に小型の個体は捕食者から逃げる能力が低く、多くの場合は食べられてしまいます。
今回の研究結果は、どんなウナギを放流すると生き残りやすく、高い効果が得られるのか
考えるのに役立つと指摘しています。

02/16 15:58