谷あいへの盛り土を含む事業計画が問題視されている埼玉県小川町の「さいたま小川町メガソーラー」で、萩生田光一経済産業大臣は2月22日、事業者に対して抜本的な事業の見直しを求める異例の勧告に踏み切った。昨夏の熱海市の土石流を念頭に、埼玉県知事と環境大臣が出した厳しい意見に沿った内容だ。

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■環境アセス手続きの中で事業者が示した説明の「ウソ」
国の環境アセス制度では、事業者が作成した環境アセス準備書について、住民や関係者が意見書を事業者に送り、事業者が意見の概要をまとめ、自社の見解をつけた文書を経産省に提出する仕組みがある。

小川エナジー合同会社は昨年8月31日付の「意見の概要と当社の見解」の中で、「外から持ち込まれる土についての不安」に対して「搬入土の安全性を確保します」と強調した。

安全確保の方法については、「株式会社建設資源広域利用センター(UCR)の土のみを利用する」と明記しており、「土搬入に当たっては、地方公共団体などで構成される『UCR利用調整会議』により搬出土量・受け入れ地の調整が行われ、受け入れ地や土壌分析結果により安全性が確保された土のみを取り扱う」と説明している。

この点について、経産大臣勧告は「土質、土壌などの受け入れ条件について準備書に記載されておらず、適切な検討がされているか確認できない」としたうえで、土砂の搬入が必要であれば、土砂の受け入れ条件を示して地域住民に説明し、受け入れる土砂が発生する工事名、工事場所、搬入土量、土質などを搬入前に公表するよう求めている。

UCRは、首都圏の5自治体(東京都、埼玉、神奈川県、横浜、川崎市)と民間建設会社などが出資して1991年に設立された。建設発生土のリサイクルを進めることで、自然環境への負荷を減らし、建設コストを削減することを目的としている。

しかしそもそも、UCRの土のみを受け入れるとの事業者の説明に信憑性があるのだろうか。UCRはホームページ上で受け入れ地の場所と事業者を明示しているが、小川町メガソーラーおよび小川エナジー合同会社は記載されていない。環境アセスの手続き中なのでホームページへの記載はないが小川エナジー合同会社はすでに受け入れ希望の申し出をUCRに行っているのか、あるいは受け入れを希望すればかなうためそうした手続きは必要ないということなのか。

UCRに聞いたところ、驚きの答えが返ってきた。「小川エナジー合同会社から受け入れ希望の話があったかというと、まったくない。希望があれば、受け入れ地として登録するかどうかについて、場所や法令の適合性、現地の交通状況、近隣とのトラブル状況、事業者が公共事業の入札参加資格を持っているかなど内規に基づく審査を行う。簡単に受け入れ地になれるわけではない」(総務課)。

環境大臣意見、経産大臣勧告とも、事業者がUCRの土のみを受け入れるとしても、その受け入れ条件を明記していないのは問題だ、と指摘した。しかし、あたかもUCRの土の受け入れ先となるかのように事業者が説明しているのは、虚偽に当たるのではないか。

もっとも、埼玉県知事、環境、経産両大臣が強く求めているように、事業計画を抜本的に見直して盛り土量を減らし、外から搬入する土をゼロにすれば、UCRの土の受け入れ問題は生じないことになる。

■抜本的見直しが求められるが強行を止める手立てはない
小川町のメガソーラーは、国の環境アセス制度の対象に太陽光発電施設が追加された2020年4月以降、事業の抜本的見直しが求められた初めてのケースだ。とはいえ、現行の環境アセス制度には、事業者が事業を強行しようとすれば止める手立てはない。事業者は勧告を受けて環境影響評価書を作成し公表する。評価書の内容が不十分であれば、経産省は評価書の変更を命じることができるが、通常は評価書の作成公表時点で環境アセス手続きは事実上終了し、工事の許認可手続きが進められる。

今後の焦点は、ひとえに「小川エナジー合同会社」の対応にかかる。経産大臣勧告の発表直後に同社に電話し、対応を聞いたところ、「取材には対応しないし、コメントもしない」(合同会社の加藤隆洋氏)との答えで、UCRに関連した点についても「取材には対応しない」の一点張りだった。

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