■「真珠湾」発言に釈然としない日本人、 世界からどう見えるか

 ウクライナのゼレンスキー大統領による国会リモート演説が賞賛されている。
(中略)
 しかし、その一方でネットやSNSでは、日本の連帯や支援を呼びかけるのならば、まずはあの「非礼」について一言詫びるのが筋ではないかという批判的な声も少なくない。
(中略)
「真珠湾攻撃を思い出してほしい。」

 さらにその後に、9.11同時多発テロを例に出したことで、かつての日本を世界から孤立して暴走するロシアと重ねているだけではなく、
イスラム原理主義者といっしょくたにしているとして一部から「日本をバカにしている」などの怒りの声が上がっているのだ。

■かつての日本は「テロ国家」という アメリカの常識

 アメリカの教育現場では、真珠湾攻撃は民間人68人が命を奪われた、卑劣な奇襲攻撃として教えられる。
2007年には、ブッシュ大統領(当時)も国内で演説中、米軍のイラク駐留を継続させる理由を述べる際、アルカイダの同時多発テロ事件と真珠湾攻撃を重ねる発言をしている。
(中略)
国内でのぶっちゃけトークや、自国民のナショナリズムを鼓舞するような演説の場においては、「真珠湾攻撃=テロ」「中国大陸進出=侵略」というのは、アメリカ人の常識なのだ。

■欧州でも「カミカゼ」に対する強烈な恐怖 海外から見える日本の姿
このような認識は欧州もそれほど変わらない。

 2016年に、フランスやベルギーでイスラム原理主義者による自爆テロをメディアも政治家もごく自然に「カミカゼ」と呼んでいる。
それ以前にもスペインでバスク地方の分離独立を目指すテロリストがそのように呼ばれていたケースもある。
(中略)

■日本の愛国者とプーチン支持者の 思考回路は瓜二つ?

…という話を聞いていると、あまりに歪んだ歴史認識に怒りが爆発してしまう愛国者の方も多いかもしれない。

 ネットなど、ちまたにあふれる「学校で教えてくれない歴史の真実」では、太平洋戦争というのは、
アジアを白人支配から解放するための戦いであって、真珠湾攻撃も西側諸国が日本を悪者にするために仕組んだ陰謀というのが“定説”となっているからだ。
(中略)
 しかし、世界は広い。このような愛国者の皆さんの歴史認識に対して「わかる、わかる」と大きくうなずいてくれる人たちもいる。
意見交換すればするほど考え方が近いことがわかって意気投合すること請け合いである。

 その人々とは、プーチンの軍事侵攻を支持しているロシア国民だ
(中略)
実はロシア国内の最新世論調査ではプーチンの支持率は71%となっている。
(中略)
心の底から「西側諸国とウクライナの脅威からロシアを守るためにプーチンは軍事侵攻に踏み切った」と信じて疑わない愛国者もかなりいるのだ。

 「真珠湾攻撃はアメリカの陰謀で、太平洋戦争は自衛のための戦争だった」という日本の愛国者の主張と、双子のように瓜二つなのだ。

 なぜこうなってしまうのかというと、教育と報道によるものだ。そして何よりも大きいのは、「自国の利益や国民の命を守るための戦いは常に正しい」と信じる心、
あるいは信じたいという願望など、ナショナリズムのバイアスである。

 それがよくわかるのが、モスクワ在住国際政治アナリストの村上大空氏が以下の現地レポートである。

「政治討論番組に至っては、『西側諸国がいかにロシアを騙してきたのか』『ウクライナ政権がどのような非人道的なことをしてきたのか」という論題ばかりになっており、
その主張の正当性や事実関係に対しては、疑問が挟まれない。

このようなメディア空間では、『悪いのは欧米諸国である』『すべては米国の責任』『ウクライナ国民は、洗脳されている』という情報だけがシャワーとして浴びせ続けられる。
(中略)
今、多くの日本人が、まるで自分たちの戦争であるかのように「ロシアをどうすれば屈服させられるか」を盛んに論じている。
かつて自分たちを「テロリスト国家」扱いした「西側諸国の正義」に肩入れをして、それをロシアに押し付けようとしている。
 プーチンの主張を「正義」と感じるロシアの愛国者からすれば、日本は完全に「敵国」である。我々の祖父母が米英に感じていた憎悪と同じものではないか。

https://news.yahoo.co.jp/articles/45e15bb51d2298b29b99f314947dd50d87be417f