【ロンドン=篠崎健太】ロシアのウクライナ侵攻が欧州景気の回復に影を落としている。米S&Pグローバルが24日発表した3月のユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI、総合)速報値は54.5と、前月の55.5から1ポイント低下した。エネルギー価格の高騰やサプライチェーン(供給網)混乱への懸念から製造業を中心に慎重な見方が増えた。

ユーロ圏PMIの低下は2カ月ぶり。市場予想の53.9は上回った。前月は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ規制の緩和を追い風に大きく上昇し、2021年9月以来の高い水準になっていた。

景況感の減速は製造業で目立ち、PMIは前月比1.2ポイント低い57.0と21年1月以来の水準に落ち込んだ。ロシアへの大規模な経済制裁によるサプライチェーンの乱れや調達の遅れを指摘する声が出た。自動車を中心とする輸出受注の悪化も指数を圧迫した。

ロシアで事業を営む企業では撤退や操業停止など影響が広がっている。23日にモスクワの工場を止めたルノーは、減産などの影響を織り込んで2022年の営業利益率や純現金収支の見通しを引き下げた。

エネルギーや資材の値上がりによるコスト上昇の不安も強まった。ドイツでは卸電力の取引価格(翌月渡し)が1年前の5倍程度の水準になっている。3月のPMIでは製造業とサービス業ともに、原材料価格などの見方を反映する投入価格指数が比較できる1998年以降で最高になった。

S&Pグローバルのクリス・ウィリアムソン氏は「ロシア・ウクライナ戦争がユーロ圏景気にいかに早期かつ大きな影響を与えているか浮き彫りにした」と指摘し、4〜6月期に域内景気が落ち込む可能性があるとの見方を示した。

PMIは企業の担当者に業況や景気認識を聞き取って指数に合成したもので、50が好不況の分かれ目となる。

日本経済新聞 2022年3月24日 19:51
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR240MH0U2A320C2000000/