新型コロナウイルス感染症の後遺症に対応する専門外来が、埼玉県内で増えている。
県と県医師会が診療の指針となる症例集を作り、外来の実施を医療機関に呼び掛けたためで、不安を抱える後遺症患者が相談できる受け皿が大幅に広がった。

県によると、昨夏は県内に数えるほどしかなかった後遺症外来は、五日時点で百四十七医療機関に上る。
その名称や対応する診療科を今月から県ホームページで公開し、患者が自ら検索して身近な場所で受診できるようにした。

県と県医師会が後遺症の診療体制の整備に乗り出したのは昨年十月。公平病院(戸田市)や埼玉医科大病院(毛呂山町)など七医療機関に専門外来を開設し、
今年一月末までに計四百二十二人が受診した。

そのデータを分析し、典型的な症状や処方薬などをまとめたのが症例集だ。
年代や基礎疾患の有無、コロナの重症度にかかわらず後遺症が現れ、感染から一年たっても後遺症に悩む人が7%近くいることが明らかになった。

症状別では「嗅覚障害」の百八人(25・6%)が最多で、「動悸(どうき)・息切れ・呼吸困難」
「倦怠感(けんたいかん)」と続いた。頭がぼんやりして集中力が低下する「ブレインフォグ」や脱毛もみられ、複数の症状が出た人もいた。

県などが医療関係者向けに三月末に開いた症例集の説明会では、作成に関わった医師たちが診療の注意点を解説した。

さいたま赤十字病院(さいたま市)呼吸器内科の松島秀和医師は、コロナは軽症だったものの、後遺症外来でウイルス性肺炎が見つかった患者もいたと報告。
ただ、「ほとんどの症例が経過とともに改善した」として、患者の不安を取り除くことが重要と指摘した。

埼玉精神神経センター(同)精神科の山下博栄医師によると、「死にたい」と考えてしまう重症例もあったとし、「職場や学校など周囲の理解も治療にとって必要」などと強調した。

県は症例集を約四千二百の県内全ての医療機関に送付し、後遺症外来のさらなる拡充を目指している。
県医師会の金井忠男会長は「症例集があれば、後遺症はかかりつけ医でも十分診察できる。
今後は第五波までと第六波で後遺症が異なるのか研究し、第六波の情報を追補版のような形でまとめたい」と話している。


◇専門外来で診察した後遺症の主な症状

嗅覚障害 108人
動悸・息切れ・呼吸困難 70人

倦怠感 66人
せき・たん 62人

脱毛 41人
発熱・頭痛・後頭部違和感 38人

味覚障害 30人
胸痛・背部痛 15人

ブレインフォグ 13人
めまい・ふらつき 10人
https://www.tokyo-np.co.jp/article/170043

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