横浜市「男性職員の育休100%を」 高い目標、コロナ禍も後押し
2022年4月21日 11時00分
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 男性職員の育児休業の取得率100%をめざします――。神奈川県横浜市は今年度からこんな目標を掲げた。4月から段階的に改正育児・介護休業法が施行され、男性の育休取得を促す動きが加速している。ただ、市の直近の取得率は約24%。高い目標を設けた背景にはコロナ禍の影響もある。(小林直子)

 2歳の長女を育てる横浜市職員の杉山拓さん(41)は2020年4月から1年間、育休を取得した。「子どもの成長を間近で見ることができたし、復帰後は以前より仕事の生産性も上がった」と振り返る。

 育休が始まった頃、長女は生後6カ月。ずりばいで動き回るようになり、けがや誤飲の危険から目が離せなかった。2人きりのときはトイレに行くことさえためらう。「全く休みがない。これを母親一人でやるのは難しい」と痛感した。一方で、初めて歩いた時、おしゃべりをした時など貴重な瞬間を夫婦で一緒に喜ぶことができた。

 昨年4月に復職。家事と育児は何でもできるようになり、小学校教員の妻(37)と協力している。保育所への送迎は杉山さんの担当だ。毎日、午後6時過ぎのお迎えに間に合うよう仕事をやり繰りし、退勤する。育休の経験が両立生活に生きているといい、「男性は出産する女性と違って取得の時期を職場と調整することも可能。貴重な経験になるので、ぜひ取ってほしい」と周囲に育休の取得を勧める。

 男性の育休促進のため、4月からの法改正では事業主に子を持つことになる労働者への育休取得の意向確認などが義務づけられた。こうした動きをふまえ、横浜市は今年度からの4年間で男性職員の育休取得率を100%にすることを目標に据える。

 政令指定都市で最も男性職員の育休取得率が高いのは千葉市の92・2%(20年度)。横浜市の担当者は「100%は挑戦的な目標だが、千葉市の例を参考に、男性も当たり前に取るようにしたい」と話す。

「収入減る」「利用しにくい雰囲気」… 取得しない理由は
 新たな取り組みでは配偶者の出産を申し出た男性職員に、育休取得を前提とした「計画書」の作成を求める。育休を希望しない職員には「取得しない理由」を申告してもらうことで、取得を促すという。期間は「1カ月以上」を奨励。復職後も家事や育児に参画しやすいよう始業や終業の時間を調整できるフレックスタイムといった制度を紹介する。

 ただ、課題もある。20年度の調査では市の男性職員の育休取得率は24・1%。消防職(4・7%)、技能職(12・5%)など、男性が多く不規則な勤務形態の職場は特に低い傾向がある。また、男性職員に育休を取らない(取らなかった)理由を尋ねる調査では、「収入が減る」「制度を利用しにくい雰囲気」といった回答が目立った。

 市は管理職向けの研修を強化すると同時に、育休を取得した際の自身の収入がシミュレーションできる庁内システムを導入。取得率が低い職場には人事課が聞き取り調査をし、業務の実態をふまえて取得を促す。

 コロナ禍での経験も、市が積極的に取り組むことを後押しする。「感染して突然出勤できない職員が出たとき、どう仕事を回すかが身近な課題になった」と担当者。男性職員の育休取得を進めることは、「子育てに限らず、誰もが働きやすい職場環境を整えることにつながる」と考えている。