千葉日報2022年5月4日 05:00
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房総半島を走るローカル線「いすみ鉄道」(千葉県大多喜町)に今春、30年ぶりに新卒社員が入社した。東京都内の高校を卒業し、同町に移住した松木聖さん(18)だ。物心ついた頃から鉄道が大好きで、念願だった鉄道運転士に向けて第一歩を踏み出した。同鉄道の現在の運転士は10人で51~70歳と高齢化、沿線は過疎化が進む。そんな地域に飛び込んできた若者に地元住民も期待を寄せる。「全国の人にいすみ鉄道に乗ってもらいたい」。夢を膨らませ、日々の業務に励む。

松木さんは、東京都練馬区出身。生まれて初めて発した言葉が関西の特急電車「はるか」だったほどの鉄道ファンだ。「将来は鉄道に関わる仕事がしたい」と専門的に学べる岩倉高校(東京都台東区)に進学。高卒での就職を目指し、大手鉄道会社の門をたたいたが、新型コロナウイルスの影響などで就職活動は難航した。

そんな中、高校の先生に勧められ、昨年11月にいすみ鉄道を見学した。アットホームで地域とのつながりが強いローカル線に魅力を感じ、採用試験を経て今年1月に見事内定が決まった。

◆大多喜町に移住
今の仕事は列車の安全点検や清掃、駅での接客など。上司と毎朝、列車を点検し、車内清掃は1両に1時間かけて丁寧に行う。「人の命を預かる仕事。常に責任を持って取り組んでいる」。既に自覚は十分だ。

入社に伴って地元東京を離れ、大多喜町の住人になったが、抵抗はなかった。「夜は真っ暗だし、田んぼに囲まれた道を自転車で走る。東京ではなかったこと。驚きの連続」と笑顔を見せ、「地元の人、特に同年代の人と仲良くなりたい」と語る。

◆地元も期待
同鉄道はこれまで、運転士への転職を希望する人たちに訓練費を負担してもらい、担い手を確保する取り組みなどを行ってきたが、定着しない人も多かった。

2018年11月に着任した古竹孝一社長(50)は、働き続ける地元出身の新卒社員を探していた。松木さんの採用を決めたのは、「ずっとここに勤める気持ちでいる」という言葉に押されたからだ。

古竹社長は「ローカル線は地域の血管のようなもの。存続のためには若い世代の力が必要で、地元の人と積極的に交流して地域に根付いてほしい」と願う。

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