https://www.agrinews.co.jp/news/index/77528

育成者権の管理・保護機関検討へ

 ブドウ「シャインマスカット」の中国への無断流出によって、品種育成者が得られるはずの許諾料換算で、少なくとも年間100億円の損失が発生しているとの試算を農水省がまとめた。中国の生産者が種苗を正規に購入し、現地で栽培されたと仮定して試算した。同省は、こうした品種流出による経済損失の防止へ、品種の育成者権を管理・保護する専門機関の設立を検討する。

 「シャインマスカット」は農研機構が育成した品種。2021年4月の種苗法改正で、農作物の新品種に海外への持ち出し制限を付けられるようになったが同品種は改正前の16年ごろから無断で海外に流出。中国では栽培面積が急拡大し、20年に少なくとも5万3000ヘクタール、日本の栽培面積(19年に1840ヘクタール)の29倍に相当する。

 中国国内のブドウ全体の面積に占める同品種の割合から推計した生産量に、同品種の市場出荷価格(1キロ当たり340円)を乗じ、出荷額を計算。許諾料を出荷額の3%と仮定し、許諾契約ベースの損失額を試算した。

 政府は20日に改訂した輸出拡大に向けた実行戦略に「育成者権管理機関」の設立検討を明記した。品種の育成者に代わって専任で知的財産権を管理・保護する役割を担う。

 同省は、開発者ごとに行っていた監視などをまとめることで「違法事例の発見も効率化できる」(種苗室)とみる。フランスの専門機関を参考に具体化の検討を進める。フランスの機関は国内外の4400品種を管理し、年間100億円程度の許諾料収入を得ている。