日本海新聞2022年6月12日
https://www.nnn.co.jp/news/220612/20220612029.html

国鉄時代の色に塗り替えられたJR西日本の特急やくもが人気を集める中、沿線住民の間では“撮り鉄”のマナーを問題視する声が上がっている。農繁期を迎える中で路上駐車の車が農道をふさいだり、一部の撮り鉄が田んぼのあぜに踏み込んで撮影する光景が見られ、住民らは改めて撮影マナーの徹底を求めている。

「決して“来るな”と言うわけではないが、節度は守ってほしい」と訴えるのは伯耆町の40代男性。同町では大山を望む田園風景の中を国鉄色のやくもが走り、国道沿いで米子道のインターチェンジが近く利便性がいい。3月に国鉄色のやくもの運転が始まると、多い時は50人近くの撮り鉄が沿線に集まるようになった。

■事故を懸念      

男性が問題視するのは路上駐車。同町遠藤地区ではやくもと菜の花畑が撮影できた4月上旬、県外ナンバーの乗用車20台以上がずらりと農道に並ぶ光景が見られたという。沿線の私有地では木が切られる被害もあり、周辺では「立ち入り禁止」と書かれた立て札が目を引く。

他にも住民が張った立ち入り禁止ロープの中に侵入したり、ガードレールを越えて崖に立ったり、線路ぎりぎりまで迫って撮影する人も。列車を追って次の撮影場所に移動するため速度を上げる車も多く、男性は周辺の生活道路で事故が起きないか懸念する。人気の撮影スポットではごみが捨てられていることもあるという。

■ルール順守を     

別の60代男性は「全員が悪いわけではないが、あいさつもせず知らん顔で無視をされると地元としては不安にもなる」と吐露。沿線は農繁期を迎えているが、路上駐車の車が農道をふさいで農機が通れなかったり、撮影のため踏み込んだあぜが崩れたりする被害もあったという。

沿線住民の懸念を受け、JR米子支社の広報担当者は「国鉄色のやくもは好評で多くの方に利用いただいているが、交通ルールやマナーを守って撮影していただければ」と呼びかけている。