2022/6/16 10:45

石橋 明日佳

大阪市北区曽根崎新地のクリニックで26人が犠牲となった放火殺人事件は17日に発生から半年を迎える。犠牲になった西澤弘太郎院長=当時(49)=に心の悩みを打ち明け、相談するうちに背中を押してもらった患者は多い。昨年、夢だったメダカ販売店をオープンした男性もその一人。「先生は心の中に生き続けている」。感謝を胸に、新たな人生を歩んでいる。






「鬱を乗り越えられたのは西澤先生のおかげ」

大阪府千早赤阪村でメダカ販売店「めだか処デアイザメダカ」を営む島忠司さん(44)は西澤さんへの感謝の言葉を口にする。昨年10月にオープンした店内には常時30種を扱うというメダカの水槽が並び、関西圏を中心に少しずつファンが増え始めている。

ペット関連会社の営業マンだった島さんは、3年ほど前から昨年6月まで同府松原市のクリニックで西澤さんの診察を受けていた。

きっかけは人員不足で業務量が増えたこと。疲れが抜けなくなり、ノルマなどの重圧から精神的にも追い詰められ、ミスが続いた。地元のクリニックでは「睡眠不足」と薬を処方されただけ。そんなとき、いとこの紹介で西澤さんの診察を受けた。

自身の話にじっくりと耳を傾けてくれる西澤さんには、初診から驚くほどに自分の気持ちを打ち明けることができた。抑鬱状態と診断を受けて休職し、週に2回通院した。西澤さんは島さんにとって「聞き上手の神様」。その時々に応じた助言に、通院する度に心が軽くなるのを感じた。


新たな人生へと背中を押してくれたのも西澤さんだった。休職中、以前から飼っていたメダカの飼育日記を配信するインスタグラムが人気を集め、販売を求める声も多く寄せられた。

起業を考え、西澤さんに話すと「組織に属するよりも、自分でやった方がうまくいくと思う。絶対やった方がいい」と賛成してくれた。昨年6月に通院を終え、10月に店を開業。報告に行こうと考えていた矢先、事件は起こった。

https://www.sankei.com/article/20220616-TZUXJNQDW5L33FPY6GLTWMOTAQ/